「動物園が消える日」(唐組・第74回公演) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の第74回公演として、
1993年に初演され、2017年に再演された、
「動物園が消える日」が再再演されました。
この作品は初演も再演も観ています。
再演時の感想はブログ記事にしていますが、
改めて読み返してみると、
今回鑑賞後と全く同じ感想だったので驚きました。
記事はこちらです。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2017-11-05-1
この作品は唐組の初期、
最初の頃のメンバーが退団した後、
過渡期に上演された作品で、
その前の「桃太郎の母」とこの作品が、
それ以降の唐先生の作品のスタイルを、
決定付けたと言って良いと思います。
この時期の唐先生を代表する傑作の1つで、
群像劇としての面白さは卓越していますし、
唐イズムは濃厚に漂いながらも、
他の唐先生の作品にはない、
唯一無二の魅力のある作品です。
過去記事にも書いたように、
テネシー・ウィリアムスなどの、
アメリカ戯曲に近い味わいのある作品で、
場末のホテルのロビーという場所の設定も、
女性のサム・スペードが西陽を浴びて登場する、
というオープニングも、
勿論舞台は日本ですが、
如何にもアメリカという気分を醸しています。
経済的な理由で金沢の動物園が閉園して、
処分に困った一頭の河馬が、
密かに殺されてしまうのですが、
動物園を愛するかつての従業員達は、
それをなかったことにすることが出来ず、
妄想の中でホテルのバスタブに、
その河馬を隠します。
その妄想を先導するのが、
初演では唐先生本人が演じた灰牙という男ですが、
水に溶けて透明になった河馬が、
ホテルの天井を突き破って飛散し、
妄想は砕けて、
「動物園が消える日」が訪れるのです。
唐先生のお芝居の本質を一言で言うなら、
「見えないものを見せる」ということだと思うのですが、
この芝居はその1つの頂点として、
失いたくない夢を象徴する巨大な河馬が、
灰牙という男に降り注ぐ水の煌きの中に可視化される、
という奇跡的な光景に結実しているのです。
素晴らしいと思います。
今回の上演は2017年の再演を超えて素晴らしいもので、
久保井さんの精緻な演出と、
小規模ながら見事な舞台効果、
メインキャストの多くは2017年版と同じキャスト陣は、
円熟した見事な芝居で唐イズムを継承し、
若手の熱演も心躍らせるものがありました。
この弾丸のように放たれる台詞のリズムこそ、
小劇場の大いなる遺産なのです。
そんな傑作であった「動物園が消える日」ですが、
実は1993年初演を観た感想はあまり良いものではなく、
「唐先生はもう終わったか」というネガティブなものでした。
当時はまだ、
「状況劇場病」から、
多くの唐ファンは抜けていなかったのです。
要するにスペクタクルなものや大仕掛け、
善悪のはっきりしたダイナミックな設定と、
迫力のある人間離れした悪役の大暴れ、
みたいなものを渇望していたので、
そこで上演されたこの作品は、
そうしたものが全くなかったので、
僕には失望しか感じさせなかったのです。
ただ、今にして思えば、
それは新生唐芝居が、
誕生した瞬間でもあったのです。
テントはあまりホスピタリティの良い場所ではありませんが、
アングラ演劇、小劇場演劇の、
精髄を示すような傑作ですので、
ご興味のある方は、
是非是非テントに足をお運びください。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の第74回公演として、
1993年に初演され、2017年に再演された、
「動物園が消える日」が再再演されました。
この作品は初演も再演も観ています。
再演時の感想はブログ記事にしていますが、
改めて読み返してみると、
今回鑑賞後と全く同じ感想だったので驚きました。
記事はこちらです。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2017-11-05-1
この作品は唐組の初期、
最初の頃のメンバーが退団した後、
過渡期に上演された作品で、
その前の「桃太郎の母」とこの作品が、
それ以降の唐先生の作品のスタイルを、
決定付けたと言って良いと思います。
この時期の唐先生を代表する傑作の1つで、
群像劇としての面白さは卓越していますし、
唐イズムは濃厚に漂いながらも、
他の唐先生の作品にはない、
唯一無二の魅力のある作品です。
過去記事にも書いたように、
テネシー・ウィリアムスなどの、
アメリカ戯曲に近い味わいのある作品で、
場末のホテルのロビーという場所の設定も、
女性のサム・スペードが西陽を浴びて登場する、
というオープニングも、
勿論舞台は日本ですが、
如何にもアメリカという気分を醸しています。
経済的な理由で金沢の動物園が閉園して、
処分に困った一頭の河馬が、
密かに殺されてしまうのですが、
動物園を愛するかつての従業員達は、
それをなかったことにすることが出来ず、
妄想の中でホテルのバスタブに、
その河馬を隠します。
その妄想を先導するのが、
初演では唐先生本人が演じた灰牙という男ですが、
水に溶けて透明になった河馬が、
ホテルの天井を突き破って飛散し、
妄想は砕けて、
「動物園が消える日」が訪れるのです。
唐先生のお芝居の本質を一言で言うなら、
「見えないものを見せる」ということだと思うのですが、
この芝居はその1つの頂点として、
失いたくない夢を象徴する巨大な河馬が、
灰牙という男に降り注ぐ水の煌きの中に可視化される、
という奇跡的な光景に結実しているのです。
素晴らしいと思います。
今回の上演は2017年の再演を超えて素晴らしいもので、
久保井さんの精緻な演出と、
小規模ながら見事な舞台効果、
メインキャストの多くは2017年版と同じキャスト陣は、
円熟した見事な芝居で唐イズムを継承し、
若手の熱演も心躍らせるものがありました。
この弾丸のように放たれる台詞のリズムこそ、
小劇場の大いなる遺産なのです。
そんな傑作であった「動物園が消える日」ですが、
実は1993年初演を観た感想はあまり良いものではなく、
「唐先生はもう終わったか」というネガティブなものでした。
当時はまだ、
「状況劇場病」から、
多くの唐ファンは抜けていなかったのです。
要するにスペクタクルなものや大仕掛け、
善悪のはっきりしたダイナミックな設定と、
迫力のある人間離れした悪役の大暴れ、
みたいなものを渇望していたので、
そこで上演されたこの作品は、
そうしたものが全くなかったので、
僕には失望しか感じさせなかったのです。
ただ、今にして思えば、
それは新生唐芝居が、
誕生した瞬間でもあったのです。
テントはあまりホスピタリティの良い場所ではありませんが、
アングラ演劇、小劇場演劇の、
精髄を示すような傑作ですので、
ご興味のある方は、
是非是非テントに足をお運びください。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2024-10-20 13:53
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