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SGLT2阻害剤の認知症予防効果(2024年韓国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤の認知症予防効果.jpg
British Medical Journal誌に、
2024年8月28日付で掲載された、
経口糖尿病治療薬の認知症予防効果についての論文です。

2型糖尿病は認知症のリスクであることが知られていますが、
その治療に使われる薬剤によって、
そのリスクに差があるかどうかについては、
まだ明確なことが分かっていません。

最近の知見では、
尿に糖を排泄するSGLT2阻害剤というタイプの薬剤の使用が、
認知症のリスクの低減に働いているのでは、
という報告が幾つか見られます。

たとえば2023年に発表されたカナダの疫学データでは、
66歳以上の2型糖尿病の患者さんで、
SGLT2阻害剤を使用すると、
他のメカニズムの糖尿病治療薬である、
DPP4阻害剤を使用した場合と比較して、
その後の認知症のリスクが、
トータルで20%低下した、
という結果が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36508692/

それではより若い年齢で使用した場合にも、
同様の影響は認められるのでしょうか?

今回の研究は韓国において、
年齢が40から69歳でSGLT2阻害剤を開始した、
110885名の2型糖尿病の患者を、
年齢などをマッチさせた、
DPP4阻害剤を開始した同数の患者と比較して、
認知症の発症リスクを検証しています。

その結果、
平均で670日の観察期間において、
DPP4阻害剤を使用した患者と比較して、
SGLT2阻害剤を使用している患者は、
トータルな認知症のリスクが、
35%(95%CI:0.58から0.73)有意に低下していました。
このリスクの低下は、
治療期間が2年を超えるとより強く認められましたが、
認知症のタイプによらず認められました。

それでは、何故SGLT2阻害剤には、
認知症の予防効果があるのでしょうか?

現時点では正確なメカニズムは不明ですが、
幾つかの研究により、
このタイプの薬剤に、
脳神経細胞を保護するような効果のあることが、
報告されています。

今後より精度の高い方法で、
今回の結果は検証される必要がありますが、
最近臓器保護において多くのデータが報告されている、
SGLT2阻害剤において、
認知症予防においても肯定的なデータが蓄積されていて、
今後このタイプの薬の評価は、
より高まることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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