高身長とがんリスク(2024年中国の疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Cancer Epidemiology誌に、
2024年8月13日付でウェブ掲載された、
身長とがんリスクとの関連についての論文です。
身長が高いほどがんのリスクが増加するというのは、
かなり昔から報告されている知見です。
以前ご紹介した2013年のCancer Epidemiol Biomarkers Prev誌の論文では、
アメリカの閉経後女性を調査したデータにより、
身長が10センチ高くなる毎に、
トータルながんのリスクは13%増加した、
という結果が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23887996/
他にも多くの研究があり、メタ解析もありますが、
面白いことに概ね、身長が10センチ高くなる毎に、
10%程度のリスク増加が見られている、
という点では一致しています。
今回の論文は中国の研究者によるもので、
これまでの同様のデータは、
主に欧米人を対象として解析されたものなので、
今回はアジア人種で同様の検証を行った、
と記載されています。
ただ、最初に引用されている、
身長とがんリスクついての論文は、
その多くが韓国人の疫学データなので、
記載とはやや矛盾しているような気もします。
閑話休題…
今回の研究では中国のバイオバンクのデータを活用して、
年齢が30から79歳のトータル510145名の一般住民を、
中間値で10.1年観察した結果、
そのうちの22731名が何等かのがんを発症していました。
そこで他の関連する因子を補正した上で、
身長とがんリスクとの関連をみると、
身長が10センチ高くなる毎に、
トータルながんのリスクが16%(95%CI:1.14から1.19)、
肺癌のリスクが18%(95%CI:1.12から1.24)、
食道癌のリスクが21%(95%CI:1.12から1.30)、
乳癌のリスクが41%(95%CI:1.31から1.53)、
子宮頸癌のリスクが29%(95%CI:1.15から1.45)、
それぞれ有意に増加していました。
これとは別個に、
メンデル遺伝子解析という手法で、
中国人、韓国人、日本人のこれまでのデータを、
まとめて解析した結果でも、
ほぼ同等の結果が得られました。
このように、
人種に関わらずがん発症のリスクが、
身長が高いほど増加する、
というのは間違いのない事実であるようです。
それでは、何故身長が高いとがんになり易いのでしょうか?
上記文献には2つの仮説が提唱されている、と書かれています。
そのうちの1つは、身長の高い人は細胞数が多いので、
細胞分裂の回数も多く、
それだけ分裂時の変異も起こり易いのではないか、
というものですが、
これはあまり説得力のあるものではない気がします。
もう1つの仮説は、
高身長の要因となる、
成長ホルモンや成長因子のIGF1が、
細胞の増殖を刺激して、
それががんのリスク増加に繋がっているのではないか、
というものです。
こちらの見解の方がもっともらしいのですが、
まだ実証されている訳ではない、という点には注意が必要です。
いずれにしても、
がんのリスクが身長に影響されるのは間違いがないとしても、
その影響は軽微なものなので、
高身長の方は特にそれを不安に感じる必要はないと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Cancer Epidemiology誌に、
2024年8月13日付でウェブ掲載された、
身長とがんリスクとの関連についての論文です。
身長が高いほどがんのリスクが増加するというのは、
かなり昔から報告されている知見です。
以前ご紹介した2013年のCancer Epidemiol Biomarkers Prev誌の論文では、
アメリカの閉経後女性を調査したデータにより、
身長が10センチ高くなる毎に、
トータルながんのリスクは13%増加した、
という結果が報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23887996/
他にも多くの研究があり、メタ解析もありますが、
面白いことに概ね、身長が10センチ高くなる毎に、
10%程度のリスク増加が見られている、
という点では一致しています。
今回の論文は中国の研究者によるもので、
これまでの同様のデータは、
主に欧米人を対象として解析されたものなので、
今回はアジア人種で同様の検証を行った、
と記載されています。
ただ、最初に引用されている、
身長とがんリスクついての論文は、
その多くが韓国人の疫学データなので、
記載とはやや矛盾しているような気もします。
閑話休題…
今回の研究では中国のバイオバンクのデータを活用して、
年齢が30から79歳のトータル510145名の一般住民を、
中間値で10.1年観察した結果、
そのうちの22731名が何等かのがんを発症していました。
そこで他の関連する因子を補正した上で、
身長とがんリスクとの関連をみると、
身長が10センチ高くなる毎に、
トータルながんのリスクが16%(95%CI:1.14から1.19)、
肺癌のリスクが18%(95%CI:1.12から1.24)、
食道癌のリスクが21%(95%CI:1.12から1.30)、
乳癌のリスクが41%(95%CI:1.31から1.53)、
子宮頸癌のリスクが29%(95%CI:1.15から1.45)、
それぞれ有意に増加していました。
これとは別個に、
メンデル遺伝子解析という手法で、
中国人、韓国人、日本人のこれまでのデータを、
まとめて解析した結果でも、
ほぼ同等の結果が得られました。
このように、
人種に関わらずがん発症のリスクが、
身長が高いほど増加する、
というのは間違いのない事実であるようです。
それでは、何故身長が高いとがんになり易いのでしょうか?
上記文献には2つの仮説が提唱されている、と書かれています。
そのうちの1つは、身長の高い人は細胞数が多いので、
細胞分裂の回数も多く、
それだけ分裂時の変異も起こり易いのではないか、
というものですが、
これはあまり説得力のあるものではない気がします。
もう1つの仮説は、
高身長の要因となる、
成長ホルモンや成長因子のIGF1が、
細胞の増殖を刺激して、
それががんのリスク増加に繋がっているのではないか、
というものです。
こちらの見解の方がもっともらしいのですが、
まだ実証されている訳ではない、という点には注意が必要です。
いずれにしても、
がんのリスクが身長に影響されるのは間違いがないとしても、
その影響は軽微なものなので、
高身長の方は特にそれを不安に感じる必要はないと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-08-31 07:54
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