アスピリンの中止とその影響 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMC Medicine誌に、
2024年7月29日付で掲載された、
高齢者でのアスピリンの服用中止の影響についての論文です。
1日80から100mg程度のアスピリンを継続的に飲むことに、
心血管疾患や腺癌というタイプの癌の、
予防効果のあることは、
多くの疫学データや精度の高い臨床試験においても、
実証されている事実です。
ただ、その一方でアスピリンには出血系の合併症があり、
使用を継続することで、
消化管出血や脳出血などのリスクは増加します。
従って、アスピリンを服用することが、
その人にとって有益であるかどうかは、
その作用と有害事象とのバランスに掛かっています。
その有効性は一度そうした病気になった人の、
再発予防効果としては確立されていますが、
まだ病気にはなっていない場合の、
一次予防効果については、
どのような対象者を選ぶかによっても、
その結果は様々で統一した見解とはなっていません。
心血管疾患の中でも虚血性心疾患については、
比較的アスピリンの予防効果が実証されていますが、
脳卒中についてはそれほど明確なことが分かっていません。
特に脳卒中のリスクの高い70歳以上の高齢者については、
臨床試験の対象からは外されていることが多く、
信頼のおけるデータは限られています。
そこで70歳以上の心血管疾患のない高齢者を対象として、
低用量アスピリンの一次予防効果を検証した、
ASPREEという臨床試験が施行されました。
その結果は2018年に論文化されましたが、
高齢者に一次予防目的でアスピリンを使用しても、
心血管疾患のリスクは低下せず、
出血系の合併症は増加し、
結果として生命予後も悪化が認められた、
という衝撃的なものでした。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1805819
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1803955
つまり、
心血管疾患のない70歳以上の人においては、
アスピリン継続使用の健康効果は、
ほぼ完全に否定されたのです。
ただ、そこで問題となるのは、
アスピリンを継続して使用している高齢者において、
それを中止することのリスクはないのだろうか、
という点です。
アスピリンを開始することにメリットがない、
ということと、
それまで特に問題なくアスピリンを使用していた人が、
それを中止することの弊害がない、
ということとはまた別の問題であるからです。
今回の研究は、
今ご紹介したASPREE試験の二次解析ですが、
対象事例のうち、
途中でアスピリンを中止した事例と、
継続した事例とを比較することで、
アスピリン中止の影響を検証しているものです。
解析の結果、
アスピリンを中途で中止しても、
その後48か月までの期間において、
心血管疾患のリスクや生命予後に悪影響は生じることはなく、
重症の出血系合併症は、
明確に低下することが確認されました。
これは臨床試験のデータを後から解析したものなので、
これをもってアスピリン中止の安全性が、
実証されたとまでは言えませんが、
70歳以上の心血管疾患のない高齢者において、
一次予防目的で使用されているアスピリンについては、
中止を検討することで、
患者さんに特に弊害は生じないと、
現時点では考えて良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMC Medicine誌に、
2024年7月29日付で掲載された、
高齢者でのアスピリンの服用中止の影響についての論文です。
1日80から100mg程度のアスピリンを継続的に飲むことに、
心血管疾患や腺癌というタイプの癌の、
予防効果のあることは、
多くの疫学データや精度の高い臨床試験においても、
実証されている事実です。
ただ、その一方でアスピリンには出血系の合併症があり、
使用を継続することで、
消化管出血や脳出血などのリスクは増加します。
従って、アスピリンを服用することが、
その人にとって有益であるかどうかは、
その作用と有害事象とのバランスに掛かっています。
その有効性は一度そうした病気になった人の、
再発予防効果としては確立されていますが、
まだ病気にはなっていない場合の、
一次予防効果については、
どのような対象者を選ぶかによっても、
その結果は様々で統一した見解とはなっていません。
心血管疾患の中でも虚血性心疾患については、
比較的アスピリンの予防効果が実証されていますが、
脳卒中についてはそれほど明確なことが分かっていません。
特に脳卒中のリスクの高い70歳以上の高齢者については、
臨床試験の対象からは外されていることが多く、
信頼のおけるデータは限られています。
そこで70歳以上の心血管疾患のない高齢者を対象として、
低用量アスピリンの一次予防効果を検証した、
ASPREEという臨床試験が施行されました。
その結果は2018年に論文化されましたが、
高齢者に一次予防目的でアスピリンを使用しても、
心血管疾患のリスクは低下せず、
出血系の合併症は増加し、
結果として生命予後も悪化が認められた、
という衝撃的なものでした。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1805819
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1803955
つまり、
心血管疾患のない70歳以上の人においては、
アスピリン継続使用の健康効果は、
ほぼ完全に否定されたのです。
ただ、そこで問題となるのは、
アスピリンを継続して使用している高齢者において、
それを中止することのリスクはないのだろうか、
という点です。
アスピリンを開始することにメリットがない、
ということと、
それまで特に問題なくアスピリンを使用していた人が、
それを中止することの弊害がない、
ということとはまた別の問題であるからです。
今回の研究は、
今ご紹介したASPREE試験の二次解析ですが、
対象事例のうち、
途中でアスピリンを中止した事例と、
継続した事例とを比較することで、
アスピリン中止の影響を検証しているものです。
解析の結果、
アスピリンを中途で中止しても、
その後48か月までの期間において、
心血管疾患のリスクや生命予後に悪影響は生じることはなく、
重症の出血系合併症は、
明確に低下することが確認されました。
これは臨床試験のデータを後から解析したものなので、
これをもってアスピリン中止の安全性が、
実証されたとまでは言えませんが、
70歳以上の心血管疾患のない高齢者において、
一次予防目的で使用されているアスピリンについては、
中止を検討することで、
患者さんに特に弊害は生じないと、
現時点では考えて良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-08-26 08:19
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