「正三角関係」(NODA・MAP第27回公演) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
NODA・MAPの第27回公演として、
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を元にした、
野田さんの新作が今上演されています。
メインとなる3人兄弟に、
松本潤さん、永山瑛太さん、長澤まさみさんが扮する、
という豪華キャストです。
野田秀樹さんの作品は、
青年座に書き下ろした「大脱走」を観たのが最初で、
その次に駒場小劇場の「野獣降臨」の初演を観て、
その後は遊眠社時代に数作見逃したものがありますが、
ほぼほぼ全作品の初演に足を運んでいます。
一番感銘を受けたのは、
紀伊国屋ホールで再演した「走れメルス」で、
次の遊眠社版「大脱走」も良かったですね。
あの頃のスピード感と躍動感、
そしてラストの奇妙な抒情と余韻のようなもの、
今でも懐かしく思い出します。
それから日生劇場と組んで、
シェイクスピアなどの古典の、
野田版の読み替えを幾つかしたのですが、
あれが抜群に冴えていたんですね。
隠れた野田戯曲の傑作群ですが、
残念なことにキャストが野田さんのスピード感に不慣れで、
演劇的成果としては今一つに終わったのが残念でした。
それを復活させたのが、
SPACの「真夏の夜の夢」で、
ここに目を付けた宮城さんはさすがだと思います。
NODA・MAP以降だと、
「赤鬼」の初演、
若手を使った「ローリングストーン」辺りが、
個人的には印象に残っています。
それからかなり社会性のあるお芝居にシフトして、
どうかなあ、という感じであったのですが、
最近だと「フェイクスピア」は抜群に良くて、
あれは間違いなく野田さんを代表するお芝居の1本だと思います。
「MIWA」も意外に良かったですね。
ドストエフスキーはNODA・MAPの初期に、
「罪と罰」を江戸時代に置き換えて、
大竹しのぶさん主演でやりましたね。
結構原典に忠実で、
それがラストは将軍登場で神殺しみたいな感じになります。
まあその後の天皇制批判をテーマにしたお芝居に繋がるのですが、
当時はそうした感じは明確ではありませんでした。
「カラマーゾフの兄弟」は、
高校生の時の夏休みに読みました。
今回のお芝居は原作の舞台を終戦間近の長崎に移して、
花火師の3兄弟の話として描いています。
人間関係などは原作を踏襲していますが、
後半には原作と別個のテーマが浮上して、
スケールの大きなクライマックスに至る展開は、
最近の野田さんのお芝居の定番の流れです。
ただ、今回は「うーん」という感じ。
後半に浮上するテーマというのが、
これまでに野田さんが何度も扱ってきたものなので、
正直「またですか?」という感じが否めません。
また2時間20分休憩なしという上演時間が如何にも長くて、
集中力が切れがちになるような展開がありました。
勿論舞台面の美しさやキャストの熱演など、
優れた点も多いお芝居ではあったのですが、
数年前に「フェイクスピア」という大傑作を観ているので、
どうしても比較すると点が辛くなります。
今回キャストは皆頑張っていたと思うのですが、
主役の3人がいずれも、
舞台で安心して見ていられる、
というレベルではないので、
どうしても演出で調整する要素が大きくなります。
スピード感重視の舞台では、
その辺りがどうしても弱いな、
という感じが今回はありました。
総じてかなり強引に、
ドストエフスキーと、
社会的なテーマを繋ぎ合わせたという作品なので、
今回はそのつなぎ目に、
かなり無理があったという印象でした。
むしろロシアと日本との関わりなどを中心に据えた方が、
より興味深い作品になっていたような気もします。
そんな訳でやや落胆を感じた今回ですが、
野田さんらしい見どころは多いお芝居で、
今後海外公演もあるようですから、
日々ブラッシュアップされて、
作品が進化することに期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
NODA・MAPの第27回公演として、
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を元にした、
野田さんの新作が今上演されています。
メインとなる3人兄弟に、
松本潤さん、永山瑛太さん、長澤まさみさんが扮する、
という豪華キャストです。
野田秀樹さんの作品は、
青年座に書き下ろした「大脱走」を観たのが最初で、
その次に駒場小劇場の「野獣降臨」の初演を観て、
その後は遊眠社時代に数作見逃したものがありますが、
ほぼほぼ全作品の初演に足を運んでいます。
一番感銘を受けたのは、
紀伊国屋ホールで再演した「走れメルス」で、
次の遊眠社版「大脱走」も良かったですね。
あの頃のスピード感と躍動感、
そしてラストの奇妙な抒情と余韻のようなもの、
今でも懐かしく思い出します。
それから日生劇場と組んで、
シェイクスピアなどの古典の、
野田版の読み替えを幾つかしたのですが、
あれが抜群に冴えていたんですね。
隠れた野田戯曲の傑作群ですが、
残念なことにキャストが野田さんのスピード感に不慣れで、
演劇的成果としては今一つに終わったのが残念でした。
それを復活させたのが、
SPACの「真夏の夜の夢」で、
ここに目を付けた宮城さんはさすがだと思います。
NODA・MAP以降だと、
「赤鬼」の初演、
若手を使った「ローリングストーン」辺りが、
個人的には印象に残っています。
それからかなり社会性のあるお芝居にシフトして、
どうかなあ、という感じであったのですが、
最近だと「フェイクスピア」は抜群に良くて、
あれは間違いなく野田さんを代表するお芝居の1本だと思います。
「MIWA」も意外に良かったですね。
ドストエフスキーはNODA・MAPの初期に、
「罪と罰」を江戸時代に置き換えて、
大竹しのぶさん主演でやりましたね。
結構原典に忠実で、
それがラストは将軍登場で神殺しみたいな感じになります。
まあその後の天皇制批判をテーマにしたお芝居に繋がるのですが、
当時はそうした感じは明確ではありませんでした。
「カラマーゾフの兄弟」は、
高校生の時の夏休みに読みました。
今回のお芝居は原作の舞台を終戦間近の長崎に移して、
花火師の3兄弟の話として描いています。
人間関係などは原作を踏襲していますが、
後半には原作と別個のテーマが浮上して、
スケールの大きなクライマックスに至る展開は、
最近の野田さんのお芝居の定番の流れです。
ただ、今回は「うーん」という感じ。
後半に浮上するテーマというのが、
これまでに野田さんが何度も扱ってきたものなので、
正直「またですか?」という感じが否めません。
また2時間20分休憩なしという上演時間が如何にも長くて、
集中力が切れがちになるような展開がありました。
勿論舞台面の美しさやキャストの熱演など、
優れた点も多いお芝居ではあったのですが、
数年前に「フェイクスピア」という大傑作を観ているので、
どうしても比較すると点が辛くなります。
今回キャストは皆頑張っていたと思うのですが、
主役の3人がいずれも、
舞台で安心して見ていられる、
というレベルではないので、
どうしても演出で調整する要素が大きくなります。
スピード感重視の舞台では、
その辺りがどうしても弱いな、
という感じが今回はありました。
総じてかなり強引に、
ドストエフスキーと、
社会的なテーマを繋ぎ合わせたという作品なので、
今回はそのつなぎ目に、
かなり無理があったという印象でした。
むしろロシアと日本との関わりなどを中心に据えた方が、
より興味深い作品になっていたような気もします。
そんな訳でやや落胆を感じた今回ですが、
野田さんらしい見どころは多いお芝居で、
今後海外公演もあるようですから、
日々ブラッシュアップされて、
作品が進化することに期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-08-24 11:10
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