腹痛ががんである可能性は?(2024年イギリスの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日はクリニックは夏季の休診中です。
今日は休みの日ですが医療の話題です。
今日はこちら。
PLOS Medicine誌に2024年7月30日付で掲載された、
腹痛と腹満の鑑別診断についての論文です。
これはまあ、人間用というよりは、
AI向けのデータだと思います。
一般的な症状から、
どのような確率でどのような病気を疑うべきか、
その基礎的な情報を解析したもので、
こうしたデータが、
AIによる診断の基礎となるのだと思います。
診断学における人間の関与は、
今後は急速に減ってゆくようです。
閑話休題…
腹痛や腹満などの腹部症状は、
プライマリケアへの相談全体のうち、
10%を占めるというデータがあるほど、
一般的な症状です。
毎月50歳を超える年齢の10人に1人が腹痛を経験し、
そのうちの4分の1が医療機関を受診している、
という報告もあります。
こうした腹痛や腹満の殆どは、
良性の原因によるものですが、
確率は少ないとは言え、
その中には腹部などのがんが原因となっているケースがあります。
問題はこの低い比率のがんの鑑別を、
どのように行うのか、ということです。
イギリスの関係機関のガイドラインにおいては、
3%以上のがんリスクが想定される場合、
具体的には、腹痛や腹満のある患者が、
高齢者で体重減小や吐気嘔吐、下血などの、
別の症状を伴う場合、
また貧血や血小板増多などの、
一般的な血液検査の異常を伴う場合には、
28日以内にがんの精査を行う必要がある、
という方針が示されています。
ただ、こうした方針により、
どの程度潜在しているがんが発見出来るのか、
その一方でどの程度の見落としがあるのか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究では、
イギリスの臨床研究データやがん登録データなどを活用して、
プライマリケアのクリニックを受診した、
30歳以上の腹痛の患者425549名と、
腹満の患者52321名を、
その背景や同時期に施行された血液検査の結果と、
照らし合わせて検証しています。
その結果腹痛の患者さんの2.2%、腹満の患者さんの2.2%で、
受診の12か月以内に何等かのがんが診断されていました。
そして、年齢が60歳以上であると、
イギリスのガイドラインにおける精査基準である、
がんリスク3%以上という基準がクリアされていました。
これを更に症状と同時期に施行された、
一般的な血液検査のデータと照らし合わせると、
50歳から59歳の女性で腹満の症状があった場合、
その条件のみでのがんリスクは1.6%と推計されますが、
血液のフェリチン値が上昇していると10%、
アルブミンが低下していると9%、
血小板が増加していると8%、
CRPなどの炎症マーカーが増加していると6%、
貧血があると4%、
がんリスクは増加すると推計されました。
年齢と性別と症状のみからの判断と比較して、
血液検査を追加利用してリスクを解析することにより、
患者1000人当たり、63人が追加で精密検査の対象となり、
3件の新たながんが発見されると推計されました。
これだけでは分かりづらいのですが、
論文では個々の全ての条件において、
どの程度のがんリスクがあるかが一覧で提示されていて、
それをAI診断などの基礎データとして活用すれば、
より効率的な精密検査が可能となるのではないかと思います。
今後はこうした研究も、
診断学の柱となっていくように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日はクリニックは夏季の休診中です。
今日は休みの日ですが医療の話題です。
今日はこちら。
PLOS Medicine誌に2024年7月30日付で掲載された、
腹痛と腹満の鑑別診断についての論文です。
これはまあ、人間用というよりは、
AI向けのデータだと思います。
一般的な症状から、
どのような確率でどのような病気を疑うべきか、
その基礎的な情報を解析したもので、
こうしたデータが、
AIによる診断の基礎となるのだと思います。
診断学における人間の関与は、
今後は急速に減ってゆくようです。
閑話休題…
腹痛や腹満などの腹部症状は、
プライマリケアへの相談全体のうち、
10%を占めるというデータがあるほど、
一般的な症状です。
毎月50歳を超える年齢の10人に1人が腹痛を経験し、
そのうちの4分の1が医療機関を受診している、
という報告もあります。
こうした腹痛や腹満の殆どは、
良性の原因によるものですが、
確率は少ないとは言え、
その中には腹部などのがんが原因となっているケースがあります。
問題はこの低い比率のがんの鑑別を、
どのように行うのか、ということです。
イギリスの関係機関のガイドラインにおいては、
3%以上のがんリスクが想定される場合、
具体的には、腹痛や腹満のある患者が、
高齢者で体重減小や吐気嘔吐、下血などの、
別の症状を伴う場合、
また貧血や血小板増多などの、
一般的な血液検査の異常を伴う場合には、
28日以内にがんの精査を行う必要がある、
という方針が示されています。
ただ、こうした方針により、
どの程度潜在しているがんが発見出来るのか、
その一方でどの程度の見落としがあるのか、
というような点については、
あまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究では、
イギリスの臨床研究データやがん登録データなどを活用して、
プライマリケアのクリニックを受診した、
30歳以上の腹痛の患者425549名と、
腹満の患者52321名を、
その背景や同時期に施行された血液検査の結果と、
照らし合わせて検証しています。
その結果腹痛の患者さんの2.2%、腹満の患者さんの2.2%で、
受診の12か月以内に何等かのがんが診断されていました。
そして、年齢が60歳以上であると、
イギリスのガイドラインにおける精査基準である、
がんリスク3%以上という基準がクリアされていました。
これを更に症状と同時期に施行された、
一般的な血液検査のデータと照らし合わせると、
50歳から59歳の女性で腹満の症状があった場合、
その条件のみでのがんリスクは1.6%と推計されますが、
血液のフェリチン値が上昇していると10%、
アルブミンが低下していると9%、
血小板が増加していると8%、
CRPなどの炎症マーカーが増加していると6%、
貧血があると4%、
がんリスクは増加すると推計されました。
年齢と性別と症状のみからの判断と比較して、
血液検査を追加利用してリスクを解析することにより、
患者1000人当たり、63人が追加で精密検査の対象となり、
3件の新たながんが発見されると推計されました。
これだけでは分かりづらいのですが、
論文では個々の全ての条件において、
どの程度のがんリスクがあるかが一覧で提示されていて、
それをAI診断などの基礎データとして活用すれば、
より効率的な精密検査が可能となるのではないかと思います。
今後はこうした研究も、
診断学の柱となっていくように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-08-12 08:21
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