「蛇の道」(フランス版セルフリメイク) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
黒沢清監督が1998年にビデオムービーとして作った作品を、
フランスを舞台とした、
セルフリメイクの新作映画としてリクリエーションし、
日本とフランスなどの合作として製作された映画が、
今ロードショー公開されています。
黒沢清監督は大ファンで、
関連するインタビュー本なども全て持っているので、
これは絶対観なければと思い公開早々に鑑賞しました。
監督の作品は、
一般受けはあまりしないことが多く、
あっと言う間に公開が終了してしまうことが多いからです。
殺された娘の復讐を誓う男に、
謎の人物が協力して、
犯人の疑いのある男を監禁して拷問するのですが、
監禁された男は、
別の人物を真犯人として告発するので、
その告発の連鎖の中で、
事件の真相は次第にあやふやになり、
復讐を誓う男と協力者との関係も、
変貌して迷宮のような世界に誘われます。
オリジナルは謎の協力者を、
数学者で塾教師の男に設定して、
哀川翔さんが演じたのですが、
今回のリメイク版ではフランスに舞台を移し、
復讐を誓う男をフランス人の男性が演じる一方、
協力者は柴咲コウさん演じる、
フランス在住の心療内科医に変更しています。
そのため全体の構成はほぼ同じであるものの、
ラストは全く新しいものになっています。
オリジナルは哀川翔さんが、
謎めいた、別世界から現れたような人物で、
その正体は最後まで明確に明かされることはなく、
最後は観客も別世界に誘われるような感じがあるのですが、
今回のリメイク版では、
柴咲さんの意図はもう少し明確になっていて、
「CURE」の催眠術師に近いニュアンスがあり、
ラストもより明確なものになっています。
これはオリジナル版も面白いし、
今回のリメイク版も、
黒沢清監督のファンにはたまらない、
傑作の1つになっていたと思います。
オリジナルはね、
北野武映画の影響が大きいと思うのですね。
哀川翔さんの役を、
北野武さんがやればピタリと来る、という感じなんですね。
暴力の連鎖の感じも、
ちょっと歪んだ間抜けなキャラの感じも、
北野映画の匂いがプンプンとする感じです。
ただ、脚本の高橋洋さんが、
「怪奇大作戦」や「悪魔くん」、「妖怪人間ベム」などで育った、
怪奇大好きな人なので、
仕込み杖の女殺し屋など、
怪奇に寄せたキャラが登場すると共に、
大和屋竺さんのトリッキーな脚本による、
ルパン3世ファーストシーズンや、
鈴木清順監督の「殺しの烙印」、
若松孝二監督の「処女ゲバゲバ」みたいな世界も、
同時に展開されるのが魅力です。
今回のリメイクは、
柴咲コウさんが患者を操る感じなどに、
「CURE」のテイストがありながら、
大和屋竺風の怪奇味のあるトリッキーな残酷劇の雰囲気、
1970年代モノクロ映画の感じも、
濃厚に漂っていて、
僕は最初から、いいな、いいな、という感じで観ていて、
最後のモニターの中で青木崇高さんが凍り付くカットまで、
これでなくちゃ、という感じで堪能することが出来ました。
大好きです。
ただ、一般の映画ファンの方が観て、
皆さんが面白いと感じるような作品ではなく、
ヒッチコック映画と同じく、
これはその1つ1つのカットの技巧を、
藝術品として楽しむようなタイプの映画なので、
是非その点は理解の上で鑑賞して頂きたいと思います。
たとえば、街中の廃墟みたいな場所で、
監禁することが不自然、というような意見があるのですね。
それは普通に考えれば勿論そうなのですが、
そういうリアルな表現を一旦排除したところに、
この映画のビジュアルは成立しているんですね。
それは「処女ゲバゲバ」で密室での拷問劇を、
敢えて荒野で表現する、というのと同じなんですね。
黒沢清監督は、
その書かれたものやインタビュー記事などを読めば、
物凄くロジカルに、
1つ1つのカットを考える人なんですね。
好い加減に撮られたカットは1つたりともないのです。
なので一見、いい加減で辻褄の合わないように思えるシーンでも、
映画としてのロジックは緻密で一貫しているものなのです。
観ながらそれを確認して読み解くことが、
黒沢清作品の一番の醍醐味なのです。
今回の作品もその1つの完成形と言える傑作で、
是非大スクリーンで鑑賞出来る機会を、
お見逃しにならないようにして下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
黒沢清監督が1998年にビデオムービーとして作った作品を、
フランスを舞台とした、
セルフリメイクの新作映画としてリクリエーションし、
日本とフランスなどの合作として製作された映画が、
今ロードショー公開されています。
黒沢清監督は大ファンで、
関連するインタビュー本なども全て持っているので、
これは絶対観なければと思い公開早々に鑑賞しました。
監督の作品は、
一般受けはあまりしないことが多く、
あっと言う間に公開が終了してしまうことが多いからです。
殺された娘の復讐を誓う男に、
謎の人物が協力して、
犯人の疑いのある男を監禁して拷問するのですが、
監禁された男は、
別の人物を真犯人として告発するので、
その告発の連鎖の中で、
事件の真相は次第にあやふやになり、
復讐を誓う男と協力者との関係も、
変貌して迷宮のような世界に誘われます。
オリジナルは謎の協力者を、
数学者で塾教師の男に設定して、
哀川翔さんが演じたのですが、
今回のリメイク版ではフランスに舞台を移し、
復讐を誓う男をフランス人の男性が演じる一方、
協力者は柴咲コウさん演じる、
フランス在住の心療内科医に変更しています。
そのため全体の構成はほぼ同じであるものの、
ラストは全く新しいものになっています。
オリジナルは哀川翔さんが、
謎めいた、別世界から現れたような人物で、
その正体は最後まで明確に明かされることはなく、
最後は観客も別世界に誘われるような感じがあるのですが、
今回のリメイク版では、
柴咲さんの意図はもう少し明確になっていて、
「CURE」の催眠術師に近いニュアンスがあり、
ラストもより明確なものになっています。
これはオリジナル版も面白いし、
今回のリメイク版も、
黒沢清監督のファンにはたまらない、
傑作の1つになっていたと思います。
オリジナルはね、
北野武映画の影響が大きいと思うのですね。
哀川翔さんの役を、
北野武さんがやればピタリと来る、という感じなんですね。
暴力の連鎖の感じも、
ちょっと歪んだ間抜けなキャラの感じも、
北野映画の匂いがプンプンとする感じです。
ただ、脚本の高橋洋さんが、
「怪奇大作戦」や「悪魔くん」、「妖怪人間ベム」などで育った、
怪奇大好きな人なので、
仕込み杖の女殺し屋など、
怪奇に寄せたキャラが登場すると共に、
大和屋竺さんのトリッキーな脚本による、
ルパン3世ファーストシーズンや、
鈴木清順監督の「殺しの烙印」、
若松孝二監督の「処女ゲバゲバ」みたいな世界も、
同時に展開されるのが魅力です。
今回のリメイクは、
柴咲コウさんが患者を操る感じなどに、
「CURE」のテイストがありながら、
大和屋竺風の怪奇味のあるトリッキーな残酷劇の雰囲気、
1970年代モノクロ映画の感じも、
濃厚に漂っていて、
僕は最初から、いいな、いいな、という感じで観ていて、
最後のモニターの中で青木崇高さんが凍り付くカットまで、
これでなくちゃ、という感じで堪能することが出来ました。
大好きです。
ただ、一般の映画ファンの方が観て、
皆さんが面白いと感じるような作品ではなく、
ヒッチコック映画と同じく、
これはその1つ1つのカットの技巧を、
藝術品として楽しむようなタイプの映画なので、
是非その点は理解の上で鑑賞して頂きたいと思います。
たとえば、街中の廃墟みたいな場所で、
監禁することが不自然、というような意見があるのですね。
それは普通に考えれば勿論そうなのですが、
そういうリアルな表現を一旦排除したところに、
この映画のビジュアルは成立しているんですね。
それは「処女ゲバゲバ」で密室での拷問劇を、
敢えて荒野で表現する、というのと同じなんですね。
黒沢清監督は、
その書かれたものやインタビュー記事などを読めば、
物凄くロジカルに、
1つ1つのカットを考える人なんですね。
好い加減に撮られたカットは1つたりともないのです。
なので一見、いい加減で辻褄の合わないように思えるシーンでも、
映画としてのロジックは緻密で一貫しているものなのです。
観ながらそれを確認して読み解くことが、
黒沢清作品の一番の醍醐味なのです。
今回の作品もその1つの完成形と言える傑作で、
是非大スクリーンで鑑賞出来る機会を、
お見逃しにならないようにして下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2024-06-30 19:28
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