「関心領域」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ポーランドなどの合作で、
2023年のカンヌのグランプリを獲得した「関心領域」が、
今ロードショー公開されています。
これは内容というよりも、
その様式がかなり特異な映画で、
オープニングから映像のない黒い画面に、
気持ちを逆なでするような音楽のみが、
延々と流れますし、
ラストも再び音効のみで締め括られます。
観ていない方も多くがご存じのように、
アウシュビッツ収容所の所長を長く務めた、
ルドルフ・ヘスの一家のドラマが、
その隣にある収容所での虐殺を、
ないものであるかのように展開され、
その家族劇的な凡庸なドラマのみが、
ほぼ作品の全てとなっています。
確かに面白い発想だと思います。
ただ、鑑賞前のイメージとしては、
本当に牧歌的な美しい家族のドラマのみが展開され、
そのまま終わるようなものを想定していたのですが、
実際にはそれほど徹底している訳ではなくて、
ヘスの妻の母親は、
その異様な雰囲気に怖れをなして逃亡してしまいますし、
途中で暗視カメラのような映像が流れ、
ポーランドの地元の少女が、
密かにユダヤ人を助ける、
というようなパートが童話的に差し挟まれます。
わざわざ暗視カメラにしたのは、
それが「見えない」ということを徹底しているのだと思いますが、
何か中途半端な印象になるので、
却って入れない方が良かったように感じました。
ラストにヘスが意味ありげに嘔吐するのも、
拮抗を欠くような気がしますし、
現在の博物館となったアウシュビッツで、
職員が掃除をする風景を唐突に入れるのも、
とても意地悪でひねくれた発想だなあ、
とは思うものの、
これもない方が良かったように感じました。
全体に描写がしつこいのも個人的には趣味ではなくて、
たとえば焼却されたユダヤ人の灰を肥料にして、
ヘスの家の庭に極彩色の花が咲くのを、
延々と映すのも、やり過ぎ感がありました。
そんな訳であまり良いとは思えなかったのですが、
僕は前から新しいタイプの作品を受け入れるのが苦手で、
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」も、
「ワイルド・アット・ハート」も、
「バービー」も、
初見ではとても良いとは思えなかったので、
今回の作品もその斬新な素晴らしさを、
おそらく見落としている可能性が高いのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ポーランドなどの合作で、
2023年のカンヌのグランプリを獲得した「関心領域」が、
今ロードショー公開されています。
これは内容というよりも、
その様式がかなり特異な映画で、
オープニングから映像のない黒い画面に、
気持ちを逆なでするような音楽のみが、
延々と流れますし、
ラストも再び音効のみで締め括られます。
観ていない方も多くがご存じのように、
アウシュビッツ収容所の所長を長く務めた、
ルドルフ・ヘスの一家のドラマが、
その隣にある収容所での虐殺を、
ないものであるかのように展開され、
その家族劇的な凡庸なドラマのみが、
ほぼ作品の全てとなっています。
確かに面白い発想だと思います。
ただ、鑑賞前のイメージとしては、
本当に牧歌的な美しい家族のドラマのみが展開され、
そのまま終わるようなものを想定していたのですが、
実際にはそれほど徹底している訳ではなくて、
ヘスの妻の母親は、
その異様な雰囲気に怖れをなして逃亡してしまいますし、
途中で暗視カメラのような映像が流れ、
ポーランドの地元の少女が、
密かにユダヤ人を助ける、
というようなパートが童話的に差し挟まれます。
わざわざ暗視カメラにしたのは、
それが「見えない」ということを徹底しているのだと思いますが、
何か中途半端な印象になるので、
却って入れない方が良かったように感じました。
ラストにヘスが意味ありげに嘔吐するのも、
拮抗を欠くような気がしますし、
現在の博物館となったアウシュビッツで、
職員が掃除をする風景を唐突に入れるのも、
とても意地悪でひねくれた発想だなあ、
とは思うものの、
これもない方が良かったように感じました。
全体に描写がしつこいのも個人的には趣味ではなくて、
たとえば焼却されたユダヤ人の灰を肥料にして、
ヘスの家の庭に極彩色の花が咲くのを、
延々と映すのも、やり過ぎ感がありました。
そんな訳であまり良いとは思えなかったのですが、
僕は前から新しいタイプの作品を受け入れるのが苦手で、
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」も、
「ワイルド・アット・ハート」も、
「バービー」も、
初見ではとても良いとは思えなかったので、
今回の作品もその斬新な素晴らしさを、
おそらく見落としている可能性が高いのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2024-06-16 14:33
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