亜鉛の風邪に対する有効性(コクランレビュー2024年版) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
多くの臨床データの有効性などを解析しているコクランレビューが、
2024年5月9日付で発表した、
亜鉛の感冒に対する有効性についての検証結果です。
亜鉛は身体に必要不可欠な微量元素で、
貝類などに多く含まれ、
その欠乏は湿疹や口内炎、
味覚障害などの原因となります。
そして、体内において酵素活性など多くの代謝経路において、
必要な物質であると考えられています。
この亜鉛が風邪の治療に効果があると考えられたのは、
まず亜鉛の欠乏により感染症が起こりやすくなる、
という知見によっています。
その後1974年に亜鉛が風邪の原因ウイルスの代表である、
ライノウイルスの増殖(複製)を抑制する、
という基礎実験の知見があり、
それから亜鉛が細胞膜の毒素などによる障害を、
予防する働きがあるという、
これも基礎実験のデータが1983年に発表されています。
こうした知見からは、
風邪の治療として亜鉛を用いることにより、
有効性があるのではないか、
という仮説が導かれます。
そして、その効果を検証するために、
介入試験を含む多くの臨床試験が行われました。
当初使用されたのは点鼻のスプレーで、
これは鼻の粘膜に付着したウイルスの、
増殖を抑える効果が期待されました。
ただ、スプレーの効果は不安定で、
明確な治療効果は殆ど確認されませんでした。
そこで次に用量が様々な亜鉛の飲み薬やドロップ剤が、
風邪の治療薬として試みられました。
今回のコクランレビューでは、
これまでに発表された亜鉛の感冒に対する、
予防と治療双方の有効性についての主だった臨床データを、
まとめて解析してその検証を行っています。
使用されているのは、偽薬を使用した、
精度の高い臨床試験データに限られています。
トータルで予防に関して15、治療に関して19の、
臨床試験に含まれる8526例が対象となっています。
解析の結果、
感冒の予防については、
亜鉛製剤の使用はほぼ無効と判断されました。
一方で治療目的の使用については、
偽薬と比較して、2.37日(95%CI:-4.21から-0.53)、
有意に症状の持続期間を短縮していました。
ただ、それほど精度の高い結果ではありません。
この結果は以前から指摘されていたことではありますが、
亜鉛製剤には感冒の回復を、
一定期間短縮させる可能性があり、
短期間の使用であれば重い副作用や有害事象の報告はほぼなく、
総合感冒薬と呼ばれて売られている薬を飲むより、
有効性も安全性も高いと言って、
間違いではないように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
多くの臨床データの有効性などを解析しているコクランレビューが、
2024年5月9日付で発表した、
亜鉛の感冒に対する有効性についての検証結果です。
亜鉛は身体に必要不可欠な微量元素で、
貝類などに多く含まれ、
その欠乏は湿疹や口内炎、
味覚障害などの原因となります。
そして、体内において酵素活性など多くの代謝経路において、
必要な物質であると考えられています。
この亜鉛が風邪の治療に効果があると考えられたのは、
まず亜鉛の欠乏により感染症が起こりやすくなる、
という知見によっています。
その後1974年に亜鉛が風邪の原因ウイルスの代表である、
ライノウイルスの増殖(複製)を抑制する、
という基礎実験の知見があり、
それから亜鉛が細胞膜の毒素などによる障害を、
予防する働きがあるという、
これも基礎実験のデータが1983年に発表されています。
こうした知見からは、
風邪の治療として亜鉛を用いることにより、
有効性があるのではないか、
という仮説が導かれます。
そして、その効果を検証するために、
介入試験を含む多くの臨床試験が行われました。
当初使用されたのは点鼻のスプレーで、
これは鼻の粘膜に付着したウイルスの、
増殖を抑える効果が期待されました。
ただ、スプレーの効果は不安定で、
明確な治療効果は殆ど確認されませんでした。
そこで次に用量が様々な亜鉛の飲み薬やドロップ剤が、
風邪の治療薬として試みられました。
今回のコクランレビューでは、
これまでに発表された亜鉛の感冒に対する、
予防と治療双方の有効性についての主だった臨床データを、
まとめて解析してその検証を行っています。
使用されているのは、偽薬を使用した、
精度の高い臨床試験データに限られています。
トータルで予防に関して15、治療に関して19の、
臨床試験に含まれる8526例が対象となっています。
解析の結果、
感冒の予防については、
亜鉛製剤の使用はほぼ無効と判断されました。
一方で治療目的の使用については、
偽薬と比較して、2.37日(95%CI:-4.21から-0.53)、
有意に症状の持続期間を短縮していました。
ただ、それほど精度の高い結果ではありません。
この結果は以前から指摘されていたことではありますが、
亜鉛製剤には感冒の回復を、
一定期間短縮させる可能性があり、
短期間の使用であれば重い副作用や有害事象の報告はほぼなく、
総合感冒薬と呼ばれて売られている薬を飲むより、
有効性も安全性も高いと言って、
間違いではないように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-05-29 07:46
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コメント(1)
亜鉛には副作用はないのでしょうか?
味覚がよくなく、プロマックというお薬を服用して
体中に蕁麻疹が出てしまい、アナフィラキシー起こしてしまいました。それが原因かどうかも分かっていませんが、
そのあと、亜鉛のサプリに変えてみたのですが、
腹痛が頻繁に起こるようになり中止しました。
by koharu (2024-05-30 16:03)