岡田利規「掃除機」(KAATプロデュース 本谷有希子演出) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
チェルフィッシュの岡田利規さんがドイツで上演した戯曲を、
本谷有希子さんが演出して日本語版として上演しています。
そのKAATの公演に足を運びました。
80代の男性の父親と、
50代の引きこもりの娘と40代の無職の息子の3人が、
互いに干渉することなく同居する家を舞台に、
擬人化された掃除機が語り手を務め、
音響を担当するラッパーの環ROY(たまきろい)さんが、
もう1人の狂言回しを演じるという作品で、
今の日本のある種典型的な状況を、
複雑な演劇的仕掛けで描いています。
舞台は3方に大きく上方に盛り上がった床面で構成され、
同じ家の中のそれぞれ別の部屋が、
抽象的に表現されています。
床面が強調されているのは、
語り手が掃除機で、
常に床に視点を持っているからなのです。
80代の男性は3人の役者の3人1役で表現されていて、
細胞分裂のようなコミカルな不気味さがありますし、
音響担当の環さんは、
途中で40代の息子の友達として舞台に介入し、
その圧倒的存在感で舞台を支配すると、
最後にはその家を乗っ取ってしまいます。
非常に刺激的な舞台で、
岡田さんの作品としては、
比較的分かり易く、観易い部類ではあると思います。
環ROYさんが身体を揺らしながらリズミカルに独白する辺りは、
チェルフィッシュのスタイルなのですが、
他のキャストはもう少し「重い」芝居をしていて、
至近距離で絶叫したりするのは本谷さんのスタイルだと思います。
その辺りはちょっと微妙なバランスで、
バラバラな芝居をしていること自体が、
作品の内容と合致しているところもあるので、
意図的ではあるのだろうなあ、と思う一方で、
台詞劇として観ていると、
やや居心地の悪さを感じるところもあります。
印象的だったのは、
個々の「痛み」だけが、
分断された個人を結び付けているという指摘で、
それが今の家族内の犯罪に繋がっている可能性を考えると、
暗澹たる思いもあるのですが、
心に刺さる指摘ではありました。
正直岡田さんのお芝居には、
馴染めない部分が多いのですが、
現代を代表する劇作家の1人であることは確かで、
食わず嫌いはせずに、
時々は舞台に足を運ぼうと思いました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
チェルフィッシュの岡田利規さんがドイツで上演した戯曲を、
本谷有希子さんが演出して日本語版として上演しています。
そのKAATの公演に足を運びました。
80代の男性の父親と、
50代の引きこもりの娘と40代の無職の息子の3人が、
互いに干渉することなく同居する家を舞台に、
擬人化された掃除機が語り手を務め、
音響を担当するラッパーの環ROY(たまきろい)さんが、
もう1人の狂言回しを演じるという作品で、
今の日本のある種典型的な状況を、
複雑な演劇的仕掛けで描いています。
舞台は3方に大きく上方に盛り上がった床面で構成され、
同じ家の中のそれぞれ別の部屋が、
抽象的に表現されています。
床面が強調されているのは、
語り手が掃除機で、
常に床に視点を持っているからなのです。
80代の男性は3人の役者の3人1役で表現されていて、
細胞分裂のようなコミカルな不気味さがありますし、
音響担当の環さんは、
途中で40代の息子の友達として舞台に介入し、
その圧倒的存在感で舞台を支配すると、
最後にはその家を乗っ取ってしまいます。
非常に刺激的な舞台で、
岡田さんの作品としては、
比較的分かり易く、観易い部類ではあると思います。
環ROYさんが身体を揺らしながらリズミカルに独白する辺りは、
チェルフィッシュのスタイルなのですが、
他のキャストはもう少し「重い」芝居をしていて、
至近距離で絶叫したりするのは本谷さんのスタイルだと思います。
その辺りはちょっと微妙なバランスで、
バラバラな芝居をしていること自体が、
作品の内容と合致しているところもあるので、
意図的ではあるのだろうなあ、と思う一方で、
台詞劇として観ていると、
やや居心地の悪さを感じるところもあります。
印象的だったのは、
個々の「痛み」だけが、
分断された個人を結び付けているという指摘で、
それが今の家族内の犯罪に繋がっている可能性を考えると、
暗澹たる思いもあるのですが、
心に刺さる指摘ではありました。
正直岡田さんのお芝居には、
馴染めない部分が多いのですが、
現代を代表する劇作家の1人であることは確かで、
食わず嫌いはせずに、
時々は舞台に足を運ぼうと思いました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2023-03-12 12:46
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