AIを活用した慢性腰痛の改善効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年8月8日ウェブ掲載された、
腰痛治療にAIを活用する試みについての論文です。
慢性の腰の痛みの多くは原因不明の慢性疼痛です。
多くの場合適度なストレッチなどが指導され、
痛み止めの飲み薬や湿布などの対処療法で、
経過をみることが多いのが実際です。
ただ、痛み止めは胃潰瘍や腎臓障害などの有害事象のリスクがあり、
それを軽減したオピオイドと呼ばれる薬剤は、
麻薬ほど強いものではありませんが、
依存性などの問題が指摘されています。
身体に有害な作用のない治療法として、
その有効性が確立されているものの1つが、
認知行動療法です。
慢性疼痛は、
痛みによるストレスによって、
痛みが増幅されるような、
負の連鎖があることが指摘されています。
これを軽減し解消する有効性があるのが、
「痛みなどに対する思い込み」を修正することにより、
生活習慣も良い方向に改善し、
痛みを軽減する心理療法である、
認知行動療法なのです。
ただ、通常臨床研究で効果が確認されているのは、
6から12週間に渡り、
定期的かつ継続的にセラピストとの対面治療を繰り返す、
という方法です。
研究では可能であっても、
一般の診療において、
こうした方法を行うことは困難です。
そこで最近注目されているのが、
AIを活用して自己学習出来る、
認知行動療法のプログラムを作成し、
それを患者さん自身にやってもらう、
という方法です。
しかし、実際にどの程度の効果があるのでしょうか?
今回の研究ではアメリカにおいて、
慢性の腰痛症と診断された278名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は1回45分のセラピストによる電話診療をを施行、
もう一方はAI活用のプログラムに基づき、
ボイスメッセージでの治療を行います。
ただ、AI活用のプログラムも、
患者さんの希望があれば、
適宜セラピストの電話によるフィードバックは、
可能な仕組みになっています。
治療はいずれも10週間に渡って行われ、
その後一定期間をおいて有効性が評価されています。
その結果、
RMDQという、
個々の生活動作が、
どの程度腰痛のために障害されているかを、
数値化した指標により評価すると
治療開始3か月、及び6か月の時点での、
認知行動療法の有効性には、
両群で明確な優劣は認められませんでした。
6か月の時点での一部の有効性の指標では、
AIを活用した治療の方が、
活用しない治療より改善率が高くなっていました。
AIを治療に活用すると、しない場合と比較して、
セラピストが治療に割く時間は、
半分程度に短縮されていました。
このようにAIを使用したプログラムを活用して、
それをセラピストが補助する形で認知行動療法を施行すると、
AIを使用しない場合と比較して、
セラピストの時間的な負担は半分で済み、
その有効性は少なくとも短期間においては、
明確な差が認められませんでした。
6か月での有効性がAI使用群でやや上回っていた理由は、
明確ではありませんが、
患者さんがより自発的に治療に向き合うため、
それだけ治療の効果が持続した可能性が考えられます。
何でもAIを活用すれば問題解決、
ということではありませんが、
対象者の自発性にかなり左右される心理療法のような分野は、
意外にその活用に適しているのかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年8月8日ウェブ掲載された、
腰痛治療にAIを活用する試みについての論文です。
慢性の腰の痛みの多くは原因不明の慢性疼痛です。
多くの場合適度なストレッチなどが指導され、
痛み止めの飲み薬や湿布などの対処療法で、
経過をみることが多いのが実際です。
ただ、痛み止めは胃潰瘍や腎臓障害などの有害事象のリスクがあり、
それを軽減したオピオイドと呼ばれる薬剤は、
麻薬ほど強いものではありませんが、
依存性などの問題が指摘されています。
身体に有害な作用のない治療法として、
その有効性が確立されているものの1つが、
認知行動療法です。
慢性疼痛は、
痛みによるストレスによって、
痛みが増幅されるような、
負の連鎖があることが指摘されています。
これを軽減し解消する有効性があるのが、
「痛みなどに対する思い込み」を修正することにより、
生活習慣も良い方向に改善し、
痛みを軽減する心理療法である、
認知行動療法なのです。
ただ、通常臨床研究で効果が確認されているのは、
6から12週間に渡り、
定期的かつ継続的にセラピストとの対面治療を繰り返す、
という方法です。
研究では可能であっても、
一般の診療において、
こうした方法を行うことは困難です。
そこで最近注目されているのが、
AIを活用して自己学習出来る、
認知行動療法のプログラムを作成し、
それを患者さん自身にやってもらう、
という方法です。
しかし、実際にどの程度の効果があるのでしょうか?
今回の研究ではアメリカにおいて、
慢性の腰痛症と診断された278名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は1回45分のセラピストによる電話診療をを施行、
もう一方はAI活用のプログラムに基づき、
ボイスメッセージでの治療を行います。
ただ、AI活用のプログラムも、
患者さんの希望があれば、
適宜セラピストの電話によるフィードバックは、
可能な仕組みになっています。
治療はいずれも10週間に渡って行われ、
その後一定期間をおいて有効性が評価されています。
その結果、
RMDQという、
個々の生活動作が、
どの程度腰痛のために障害されているかを、
数値化した指標により評価すると
治療開始3か月、及び6か月の時点での、
認知行動療法の有効性には、
両群で明確な優劣は認められませんでした。
6か月の時点での一部の有効性の指標では、
AIを活用した治療の方が、
活用しない治療より改善率が高くなっていました。
AIを治療に活用すると、しない場合と比較して、
セラピストが治療に割く時間は、
半分程度に短縮されていました。
このようにAIを使用したプログラムを活用して、
それをセラピストが補助する形で認知行動療法を施行すると、
AIを使用しない場合と比較して、
セラピストの時間的な負担は半分で済み、
その有効性は少なくとも短期間においては、
明確な差が認められませんでした。
6か月での有効性がAI使用群でやや上回っていた理由は、
明確ではありませんが、
患者さんがより自発的に治療に向き合うため、
それだけ治療の効果が持続した可能性が考えられます。
何でもAIを活用すれば問題解決、
ということではありませんが、
対象者の自発性にかなり左右される心理療法のような分野は、
意外にその活用に適しているのかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-01-27 12:45
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