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「宝飾時計」(根本宗子作・演出) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
宝飾時計.jpg
根本宗子さんの新作公演が、
物凄い豪華なスタッフとキャストを伴って、
今大々的に上演されています。

この作品についてはちょっと複雑な気分です。

根本宗子さんはバリバリの演劇少女としてデビューし、
熱のこもった小劇場の舞台で人気を集めました。
演劇作品としてはその当時の、
下北沢のスズナリなどの小劇場を、
熱気で埋め尽くしたような舞台が、
とても印象に残っています。

それが次第にビックネームになって、
中劇場クラスの箱での公演が増えると、
多くの劇団がそうですが、
やや水増しされたような舞台面になりました。
最近ではその交流も演劇界を超えて多岐に渡り、
作家としてもそのキャリアを積み上げています。

1つの明確な成功パターンを辿っていることは、
間違いがないことだと思います。

今回の舞台はホリプロステージとして企画され、
ホリプロの高畑充希さんが主役で、
成田凌さん、小池栄子さん、伊藤万理華さんが競演、
衣装は著明なファッションデザイナー、
音楽は生演奏で、
テーマ曲は椎名林檎さんの書き下ろしという、
豪華絢爛な布陣です。

これ、何に似ているかと考えると、
中島みゆきさんの「夜会」に近い感じなんですね。

ストーリーはあるのですが、
台詞劇という感じではないのですね。
どちらかと言うと、高畑充希さんの1人語りに近い雰囲気で、
他のキャストは基本添え物という感じ。
高畑さんの感情に伴って、
時間も空間もコロコロ変わっていって、
他のキャストはそれをサポートするために出演している、
という構成です。
そして、ラストは生演奏でテーマ曲を、
高畑さんが歌い上げて終わるのです。

ね、「夜会」と一緒でしょ。

中島みゆきさんの語りがあって、
悠然たるテンポで、
繰り返しの多い場面が、
淡々と続いていって、
テーマ曲で締め括られます。

内容も小説の心理描写に近いですよね。
子役時代に1人の少年への情念から、
自分の成長を止めて、
同じ少女の舞台を演じ続けている主人公の、
心の揺らぎを綴って行きます。
2幕構成になっていて、前半も後半も70分という構成。
前編の終わりにある「秘密の曝露」があって、
結構衝撃的に雰囲気が変わるのですが、
後半は再び前半の流れを、
その秘密を交えた形で繰り返すのです。

内容も悪くないし、
キャストは豪華だし、
ラストの歌も素敵で悪くありません。

ただ、「夜会」が純粋な演劇ではないのと同じ意味で、
この作品も演劇ではないという気がします。

何より、豪華キャストがとても勿体ないですよね。

小池栄子さんは今や充分主役を張れる大女優ですが、
今回の役柄は台詞はあるものの、
主人公の心理を補完する程度の役割ですし、
伊藤万理華さんも、
「サマーフィルムにのって」など、
唯一無二の存在感のある女優さんなのに、
その存在感が活かされているとはとても思えません。
成田凌さんの役柄も、
対等な主人公の相手役ではなく、
主人公の心理の反響板のような役割を、
半ば人形のように演じているだけにも思えます。

こうした内容であれば、
ほぼ高畑さんの1人芝居でいけたと思いますし、
その方が観客の想像力を刺激して、
より演劇としては本来の姿かな、
という気がします。

まあでも、
かつての小劇場的なものからは遠く離れて、
根本さんは根本さんでしか叶わない夢を、
追い求めているのだと思いますから、
個人的にややその方向性には興味を失いつつあるのですが、
今後も時々は様子を窺いたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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