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SGLT2阻害剤の閉塞性肺疾患への有効性(2023年香港の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤の呼吸器疾患への効果.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年1月17日ウェブ掲載された、
糖尿病の治療薬の呼吸器疾患への効果を検証した論文です。

SGLT2阻害剤は最近最も注目されている、
2型糖尿病の治療薬です。

この薬は尿へのブドウ糖の排泄を増加させる作用の薬です。

それにより確かに血糖値は低下しますが、
尿糖が増加することは尿路や陰部の感染のリスクを高めますし、
尿量が増加して脱水のリスクも高めますから、
使用開始当初は、
あまり良い薬のようには思えませんでした。

この薬が注目されたのは、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクを、
有意に30%以上低下させるという、
画期的なデータがエンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
報告されたからです。

その後この心血管疾患の生命予後改善効果の多くは、
心不全の予後改善による部分が大きいことが解析され、
SGLT2阻害剤は心不全の治療薬としても、
有効な可能性が開かれたのです。

最近ではそれ以外に、
慢性腎臓病に対する進行予防効果も、
複数の臨床データで実証されています。

2型糖尿病には多くの慢性疾患が合併しており、
肺気腫や気管支喘息などの閉塞性肺疾患もその1つです。

SGLT2阻害剤には、
尿へのブドウ糖の排泄増加以外に、
抗炎症作用があることが報告されていて、
それが心不全や慢性腎臓病への有効性の、
1つの要因となっていると想定されています。
そしてその抗炎症作用は肺組織にもあることが報告されています。

それでは、
糖尿病に合併した肺疾患に対する予防効果も、
SGLT2阻害剤には存在しているのでしょうか?

今回の研究は香港において、
大規模な臨床医療データを解析することにより、
この問題の検証を行なっています。

2型糖尿病の患者、トータル30385名を対象として、
SGLT2阻害剤の使用者を、
同じように治療に広く使用されているDPP4阻害剤と、
中間値で2.2年の経過観察を行なったところ、
DPP4阻害剤使用者と比較して、
SGLT2阻害剤の使用者では、
閉塞性肺疾患の発症リスクが35%(95%CI:0.54から0.79)、
有意に低下していました。
また閉塞性肺疾患の急性増悪のリスクも、
46%(95%CI:0.36から0.83)有意に低下していました。

このように、
SGLT2阻害剤の使用は、
2型糖尿病の患者さんにおいて、
閉塞性肺疾患の発症予防や重症化予防に、
一定の有効性のあることが示唆されました。

今後他の臓器疾患の予防効果と同様に、
より精度の高い臨床試験で検証する必要がありますし、
糖尿病の患者さん以外での有効性も、
同時に検証される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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