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コーヒーの種類と健康効果の差 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーの種類と健康効果.jpg
European Journal of Preventive Cardiology誌に、
2022年9 月27日ウェブ掲載された、
コーヒーの種類とその健康効果の差を検証した論文です。

1日3から4杯程度までのコーヒーを飲む習慣が、
心血管疾患や癌、糖尿病などのリスクを低下させ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
これまでの多くの精度の高い疫学データにおいて、
ほぼ立証されたと言って良い知見です。

コーヒーが健康に良い飲み物であるというのは、
現在では科学的常識と言って過言ではないのです。

ただし…

それがコーヒーのどのような成分によっているのか、
という点についてはまだ明確な結論は出ていません。

カフェインやその代謝産物の量と、
健康効果が一致するとする研究は多くあり、
この点からはコーヒーの健康効果の主体は、
カフェインであると想定されます。

ただ、他にもカフェインを含む飲み物はありますが、
コーヒーに匹敵するような健康効果は確認されていません。
また、レギュラーコーヒーでもカフェインレスやデカフェのコーヒーでも、
その健康効果には差はなかったというデータもあり、
このことからは、
カフェイン以外の成分の方が、
コーヒーの健康効果の主体ではないか、
という考え方も成り立つのです。

今回のデータはイギリスの有名な大規模医療データである、
UKバイオバンクのデータを活用して、
コーヒーの健康効果を、
レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー、
デカフェのコーヒーに分けて検証しています。

対象は449563名の一般住民で、
年齢の中間値は58歳、
観察期間は12.5±0.7年の大規模なものです。

その結果、
3種類のコーヒー全てにおいて、
心血管疾患のリスク低下が有意に認められました。
コーヒー全体では、
心血管疾患のリスク低下は1日5杯まで認められ、
最もリスクが低下していたのは、
1日2から3杯で11%(95%CI:0.86から0.91)でした。
また総死亡のリスクも1日5杯まで認められ、
最もリスクが低下していたのは、
1日2から3杯で14%(95%CI:0.83から0.89)、
心血管疾患による死亡のリスク低下は、
1日1杯が最も大きく、
18%(95%CI:0.74から0.90)、
有意に低下していました。

レギュラーコーヒーのみでみると、
総死亡のリスクは1日2から3杯で最も大きく、
27%(95%CI:0.69から0.78)有意に低下していて、
心血管疾患による死亡のリスクは、
1日4から5杯で最も大きく、
35%(95%CI:0.69から0.78)有意に低下していました。

インスタントコーヒーのみでみると、
総死亡のリスク低下は1日2から3杯で最も大きく、
11%(95%CI:0.86から0.93)有意に低下していて、
心血管疾患による死亡のリスクは、
9%(95%CI:0.88から0.94)有意に低下していました。

デカフェのコーヒーのみでみると、
総死亡のリスク低下は1日2から3杯で最も大きく、
14%(95%CI:0.80から0.91)有意に低下していました。
心血管疾患による死亡のリスク低下は、
1日1から3杯で認められ1日1杯で最も大きく、
26%(95%CI:0.61から0.89)有意に低下していました。

興味深いことに同時に検証された、
心房細動を含む不整脈のリスクについては、
レギュラーコーヒーとインスタントコーヒーでは、
1日1から5杯の範囲で有意なリスク低下が認められましたが、
デカフェのコーヒーではリスクの低下は認められませんでした。

データの解釈は難しいところがあるのですが、
トータルにコーヒーに心血管疾患予防効果と、
生命予後の改善効果のあることは、
今回も疑う余地なく確認されています。
総死亡のリスクでみると、
レギュラーコーヒーと比較して、
インスタントコーヒーとデカフェのコーヒーでは、
その低下効果はやや低い傾向は認められます。
このことは、カフェインがコーヒーの健康効果において、
一定の役割を示していることを示唆していますが、
カフェイン抜きのコーヒーでも有効性は認められていて、
これはクロロゲン酸など、
カフェイン以外の成分にも、
コーヒーの健康効果の理由はあることを示しているように思われます。
また従来カフェインは不整脈のリスクを高めるのでは、
と想定されることが多かったのですが、
今回の検証ではデカフェ以外で、
不整脈リスクの低下が認められていました。

これまでのデータの多くは、
コーヒーの健康効果はその種類によらない、
というものだったので、
今回の検証結果は非常に興味深く、
今後より詳細な分析にも期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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