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「異動辞令は音楽隊!」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
異動辞令は音楽隊.jpg
「ミッドナイトスワン」の内田英治監督の、
今度は刑事ドラマとヒューマンドラマをミックスさせた新作映画が、
今ロードショー公開されています。

「ミッドナイトスワン」は印象的な作品でしたから、
これは是非と思っていたのですが、
もうすぐに公開は終わってしまいそうなので、
慌てて都合を付けて映画館に足を運びました。

これはかなり素晴らしいですよ。

「ミッドナイトスワン」はフランス映画的味わいでしたが、
今回の作品はしっかりベタな日本映画をやっていて、
日本映画全盛期の松竹人情映画的雰囲気と、
「Shall we ダンス?」的な周防映画の雰囲気がミックスされ、
しかもそれが随所で現代的にブラッシュアップされていて、
生き方を変えなければならない事態に陥った時に、
どう行動するべきかという、
古典的かつ現代的なテーマにも切り込んでいます。

オリジナルの脚本が本当に素晴らしい仕上がりで、
登場人物は多いのですがキャラが全て立っていて、
その絡め方が絶妙ですし、
ミステリーではないのですが伏線回収の完成度も高く、
これはもう充分世界水準の台本だと思います。

主人公の阿部寛演じる刑事は、
絵に描いたような叩き上げの暴力刑事で、
家庭も顧みずに仕事に執念を燃やして、
案の定妻には捨てられ、娘とも不和で、
上司にもへつらわず、部下は罵倒し、
当然の帰結として問題を起こして、
左遷をされてしまいます。

ここまでは、これまでに、
何度となく描かれて来た、
もう手垢の付きまくった設定です。

しかし、その左遷先が警察音楽隊というのが意表を付いていて、
そこでは殆ど兼務の警察官が、
嫌々音楽の練習をしているのですが、
そこで昔和太鼓の経験のある主人公は、
ドラマーとして練習を続けることに次第に喜びを見出し、
自分を変えようとするきっかけを見出すようになるのです。

前半は刑事ドラマとして始まり、
音楽隊に舞台が移ると、
今度は素人音楽隊の音楽群像ドラマが始まります。
ただ、環境は変わっても生きるということには違いがない、
ということが分かってくると、
どんな環境でも変わろうとする意思さえあれば人間は変われる、
というある意味これも手垢に塗れたメッセージが、
非常に説得力を持って観客の心に届くのです。

非常にクレヴァーな作劇だと思います。

ただ、勿論話はそこでは終わらずに、
前半の刑事ドラマの部分とその後の音楽群像ドラマの部分が、
最後になって綺麗に結びついて来るのですね。
この辺りも非常に冴えていて、
しっかり刑事ドラマとしてのクライマックスも見せつつ、
ラストは演奏会本番という、
定番の締め括りに至ります。

上映時間が119分。
これ、絶対に2時間は切る映画にする、
という強い意志で作られているんですね。
それでいて端折ったという感じはなく、
全てが十全に語られていて、
全ての登場人物に「しどころ」が用意されています。
台本、演出、編集、どれも高いレベルでないと、
こうした結果にはなりません。
映像は少しアンバートーンに沈んで美しく、
さりげないカットも非常に精緻に丹念に撮られています。

キャストも手練れが揃っていて、
主役の阿部寛は安定感のある芝居で良かったですし、
こうした人情劇には今欠かせない感じのする、
清野菜名さん、磯村勇斗さんの2人が、
それぞれ抜群の芝居をしています。
清野さんはこういう人情劇のサブが抜群にいいですね。

そんな訳でトータルに高い水準で完成された、
極めて日本映画的な人情劇で、
古い日本娯楽映画のお好きな方には、
これはもう絶対の贈り物です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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