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心筋梗塞再発予防におけるポリピルの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ポリピルの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年8月26日ウェブ掲載され9月15日号に掲載された、
複数の薬を1つの錠剤に混合した、
所謂「ポリピル」の、
心血管疾患再発予防効果を検証した論文です。

多くの薬を飲むことの弊害というものが、
最近は行政主導でクローズアップされることが多くなっています。
中には「6種類以上の薬を飲んではいけない」というような、
過激な内容のものも見られます。

勿論薬の種類が少ないに越したことはありませんし、
必要性が高くないのに、
漫然と使用される薬が多いことも問題です。

ただ、病気の状態によっては、
多くの種類の薬が必要となることもありますし、
単剤の使用より複数の薬を組み合わせた方が、
より効果的という場合もあります。

また錠剤やカプセルの数のみで、
議論をするのは乱暴な話です。

薬によっては複数の成分が一緒になっているものもありますし、
市販の風邪薬や胃腸薬には、
10種類以上の成分が混合されていることもあります。
たとえばアスピリンのように、
1種類の成分しか含まれていない薬の1錠と、
10種類の成分が混合されている風邪薬を、
同じ1剤として捉える考え方は、
はなはだ非科学的に感じられます。

それはともかくとして、
必要な薬が複数ある場合、
複数の成分を1つの錠剤に混合する、
という試みが最近評価されるようになっています。

これが「ポリピル」です。

たとえば、それぞれその作用が異なる、
3種類の薬が1つの病気の治療に必要となる場合、
3つの薬を同時に飲むよりも、
それを併せた1つの錠剤を飲む方が、
患者さんの負担も少なくなりますし、
「こんなに薬を沢山飲むのか…」という、
ネガティブな感情の緩和にも繋がるのです。

これまでにも多くの病気に対して「ポリピル」の臨床研究が行われていますが、
今回の論文では急性心筋梗塞を起こした患者さんにおいて、
再発予防のために使用する3種類の薬を、
1つの錠剤にまとめたポリピルの有効性が検証されています。

第3相の臨床試験として行われた今回の研究では、
急性心筋梗塞を起こしてから6か月以内の患者さん、
トータル2499名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は再発予防として、
抗血小板剤のアスピリンを100㎎、
ACE阻害剤であるラミプリルを2.5㎎、5㎎、10㎎のいずれか、
コレステロール降下剤であるアトルバスタチンを20㎎、40㎎のいずれかを、
3種類の錠剤として使用し、
もう一方はその3剤を一緒にしたポリピル1錠を使用して、
中間値で36か月の経過観察を施行しています。

その結果、
心筋梗塞の再発や心血管疾患による死亡、脳卒中などを併せたリスクは、
ポリピル群の9.5%で発症したのに対して、
通常の3剤使用群では12.7%で発症していて、
ポリピルの使用により再発や死亡などのリスクは、
24%(95%CI:0.60から0.96)有意に低下していました。

このように3種類の薬をまとめて1剤にして使用するだけで、
その有効性が明確に改善するという結果は非常に興味深く、
その主な理由は患者さんの薬の飲み忘れや、
意図的な怠薬や薬に対する拒否感が、
低下するためと思われますが、
薬の数が増えることの弊害が指摘されることの多い現在では、
こうした試みは今後より増えることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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