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人工甘味料の心血管疾患リスク(フランスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
人工甘味料と心血管疾患リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年9月7日ウェブ掲載された、
人工甘味料の健康影響についての論文です。

ゼロカロリーのダイエット飲料の、
身体への影響については様々な意見があります。
その一部は以前何度か記事にもしましたし、
本にも書きました。

高価な砂糖の代用として開発された、
サッカリンがその始まりで、
その後アミノ酸の一種であるアスパルテームや、
スクラロースなど、
多くの「代用砂糖」が開発されました。

これはそもそもは高価な砂糖の代用品として、
商品価格を下げることが目的で、
サッカリンと言えば安かろう悪かろうという、
どちらかと言えば悪いイメージしかなかったのですが、
カロリーのないことを逆手に取って、
ダイエット目的や健康に良いというイメージで、
急速に普及することになったのです。

サッカリンには発癌性の危惧があって、
今でも使用はされていますが、
その後開発されたアスパルテームやスクラロースの方が、
今では主に使用されています。
普及しているダイエットコーラでも、
使用されているのはアスパルテームやスクラロースが主です。

砂糖の入っているコーラを飲んでいた人が、
それを人工甘味料の入ったダイエットコーラに変えれば、
摂取カロリーは減り、
特に肥満の方や糖尿病の傾向のあるような方では、
より健康にメリットがあるように、
普通に考えればそう思えます。

しかし、人工甘味料の使用により、
体重が減少して血糖コントロールにも良い影響が見られた、
という臨床データがある一方で、
むしろ体重が増加して糖尿病の発症リスクも増加した、
というような相反するデータも得られています。

以前ご紹介したように、
人工甘味料が舌の甘味受容体に結合することにより、
身体が反応してインスリンを分泌し、
それが空腹感を増強するため、
結果として過食が誘発されるのでは、
という仮説があります。
またサッカリンにより腸内細菌叢が変化し、
耐糖能異常が生じる可能性を示した、
動物実験の結果も報告されています。

今回のデータはフランスにおける疫学研究で、
103388名の一般住民を中間値で9年の経過観察を行い、
人工甘味料の摂取量と、
心血管疾患の発症リスクとの関連を検証しています。

その結果、
人工甘味料を摂取しない人と比較して、
平均以上に摂取している人では、
心血管疾患のリスクが9%(95%CI:1.01から1.18)、
有意に増加していました。
特に脳梗塞などの脳血管疾患のリスクは、
18%(95%CI:1.06から1.31)と高い増加率を示していました。
また、人工甘味料の個別の解析では、
アスパルテームが脳血管疾患リスクを17%(95%CI:1.03から1.33)、
アセスルファムカリウムが冠動脈疾患リスクを40%(95%CI:1.06から1.84)、
スクラロースが冠動脈疾患リスクを31%(95%CI:1.00から1.71)、
それぞれ有意に増加させていました。

つまり、それほど明確なものではなく、
信頼区間がかなり広い点には注意が必要ですが、
人工甘味料の摂取そのものか、
それに付随するような食習慣が、
一定レベル心血管疾患のリスクを高める可能性のあることは、
留意する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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