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毎日の歩数と生命予後(UKバイオバンクのデータ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
毎日の歩数と生命予後.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年9月12日ウェブ掲載された、
毎日の歩数と生命予後との関連を検証した論文です。

健康のためにはよく歩くのが良い、
というのは健康の専門家かそうでないかに関わらず、
多くの人が言っていることです。

最近ではスマホやアップルウォッチなどの、
所謂ウェアラブル端末が普及して、
簡単に毎日の歩数が計れるようになり、
よりその健康効果が一般に広まりを見せています。

そこで問題となるのは目標とするべき歩数です。

馴染みのあるのが1日1万歩歩きましょう、という基準で、
皆さんも何度もお聞きになったことがあると思います。

海外たとえばアメリカにおいても同様の基準がポピュラーで、
意外にもその元になっているのは、
日本の万歩計の会社の宣伝にあったようです。

ただ、実際にはその根拠は、
あまり精度の高い研究に裏付けられたものではありません。

最近の研究結果は2019年に海外で発表されたものでも、
日本の中之条研究の報告においても、
もう少し少ない1日7000から8000歩程度が、
最も健康への有効性が高い、
という結果になっています。
更に最近指摘されることが多いのが歩行の速度で、
日本の研究では20分程度の「早歩き」を入れると、
より効果が高いというデータが得られていました。
より新しい2021年9月に発表されたアメリカの疫学データでは、
中年期に1日7000歩から10000歩の歩行を習慣化することで、
その後の超過死亡のリスクが低下する、
という内容になっていました。

今回のデータはイギリスの、
最近言及されることの多いUKバイオバンクのデータを元に解析されたもので、
登録時点で40から79歳の一般住民78500名を、
中間値で7年経過観察し、
生命予後と歩数との関連を検証しています。

その結果、
毎日の歩数がおおよそ10000歩までの範囲において、
歩数が多いほど総死亡のリスクも心血管疾患による死亡のリスクも、
癌による死亡のリスクも、
それぞれ歩数が多いほど低下していました。
歩数がその範囲で100歩増える毎に、
総死亡のリスクは8%、心血管疾患による死亡のリスクは10%、
癌による死亡のリスクは11%の低下が認められました。
歩行速度が速いことは、
そのリスクをより低下させる可能性が示唆されました。

今回の結果も、
以前の同様の研究とほぼ一致しているもので、
1日1万歩を目標として歩くことは、
最もその健康効果を最大化する可能性が高く、
それを超える歩数は明確な上乗せ効果は期待出来ません。
一方で歩行速度を早くすることは、
一定の上乗せ効果を期待出来るようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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