SSブログ

ステロイド剤の脳に与える影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ステロイドの脳への作用.jpg
BMJ Open誌に2022年8月30日ウェブ掲載された、
ステロイド剤の脳に与える影響についての論文です。

ステロイド剤(糖質コルチコイド)は、
強い抗炎症作用と免疫抑制作用を持ち、
膠原病などの慢性炎症性疾患や、
感染症に伴う免疫の過剰反応の抑制、
アレルギー性疾患の治療などに広く使用されています。
全身性のステロイド使用は、
注射や飲み薬として使用され、
湿疹へは外用剤として、
喘息や慢性閉塞性肺疾患に対しては、
吸入剤として使用されています。

ステロイド剤には高い有効性がある一方で、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあります。
肥満や耐糖能異常、骨粗鬆症、血圧上昇などの、
身体的な異常以外に、
抑うつ状態や不安障害などの、
精神的な有害事象も、
特に多くの量を長期使用した場合に、
報告されています。

ただ、この精神的な影響については、
身体的な影響と比較するとあまり明確なことが分かっていません。

全身的なステロイドの使用と比較して、
吸入ステロイドなどの局所的な使用は、
副作用や有害事象は軽度に留まると考えられています。
ただ、これも精神的な影響については、
実証的なデータは少ないのが実際です。

今回の研究はイギリスのUKバイオバンクにある、
大規模な臨床データを活用して、
この問題の検証を行っているものです。

対象はステロイドの全身的な使用者222人と、
吸入ステロイドの使用者557人で、
それをステロイド未使用の、
コントロール24106名と比較検証しています。

その結果MRI検査において計測された、
脳組織の白質統合性の低下という所見が、
コントロールと比較してステロイド使用者では有意に認められ、
吸入ステロイドの使用においても、
全身性の投与と比較すれば軽度ではあるものの、
同様に認められました。

また全身性ステロイド使用は、
コントロールと比較して抑うつ症状のリスクを76%
(95%CI:1.26から2.43)、
無関心のリスクを84%(95%CI:1.29から2.56)、
緊張や不安のリスクを78%(95%CI:1.29から2.41)、
全身倦怠感や意欲低下のリスクを90%
(95%CI:1.45から2.50)、
それぞれ有意に増加させていました。
一方で吸入ステロイドについては、
全身倦怠感や意欲低下のリスクを35%(95%CI:1.14から1.60)、
有意に増加させていましたが、
それ以外の指標については明確な差は認められませんでした。

このように、
ステロイドの使用は脳の機能と構造に影響を与え、
抑うつ気分や倦怠感、意欲低下などのリスクを、
増加させることが確認されました。
吸入ステロイドについても、
その影響はより軽度ではあるものの、
倦怠感や意欲低下などのリスクについては、
増加させる可能性が示唆されました。

ステロイドの脳作用とそれに対する対策については、
ステロイドの適切な使用を含めて、
今後より詳細な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。