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デルタ株とオミクロン株の死亡リスク比較(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石田医師が診療を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロンとデルタの死亡率比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年8月2日ウェブ掲載された、
新型コロナのオミクロン株とデルタ株の生命予後を比較した論文です。

オミクロン株の感染まだ猛威を振るっています。

日本では2022年の1月からオミクロンのBA.1株の流行が始まり、
それが徐々にBA.2にシフトして、
7月からは本格的にBA.5主体の流行となっています。

2022年1月から3月くらいまでに感染した人は、
今年の7月以降には再感染しているのが今回の特徴で、
同じオミクロン株であっても、
BA.1とBA.5はその性質が異なり、
交差免疫は成立していないことが分かります。

BA.1の流行時期には、
2021年のデルタ株の感染と比較して、
オミクロン株の潜伏期は3日より短いことが多く、
殆どが軽症で味覚嗅覚障害も少ない、
というのが定説で、
それは誤りではなかったと思いますが、
BA.5の流行に至って、
高熱などで急に発症する事例が多く、
潜伏期もやや長めで、
トータルな病状としては軽症であっても、
全身倦怠感や咳などの症状はより長く持続し、
所謂後遺症とされる事例は多く、
味覚嗅覚障害も増えている、
という印象があります。

これは勿論1か月でせいぜい300例程度の、
クリニックの外来で関わった事例のみでの印象ですから、
裏付けとなる根拠はないのですが、
その性質が変化していること自体は、
事実として捉えて良いように思います。

今回のデータはイギリスにおいて、
デルタ株とオミクロンBA.1株の死亡リスクを比較したもので、
今はBA.5の流行期であることを思えば、
かなり周回遅れのきらいのある内容ですが、
査読を通して検証された論文というのは、
一定の時間は発表までに要するものなので仕方がありません。

これまでのデータは、
主にその流行時期によって、
どの株の流行であるかを推測する、
という手法を取っていたのですが、
今回のデータは遺伝子検査で確認された事例を扱っていて、
総数は18から100歳の1035149名という、
非常に大規模なものである点に特徴があります。

その結果、
デルタ株と比較したオミクロンBA.1株感染時の死亡リスクは、
66%(95%CI:54から75)低く、
特に18から59歳の死亡リスクは86%低くなっていて、
一方で70歳以上の死亡リスクは56%の低下に留まっている、
と計算されました。

このように、
オミクロンBA.1株の感染が、
非常に軽症で常感冒に近い感染症である、
という点は、
事実と確認されたと言って良いのですが、
BA.5株の感染はそれとはやや性質の異なるもので、
その検証と今後の変異の動向自体は、
まだ慎重に経緯をみてゆく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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