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成人への解熱治療の有効性とリスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
解熱剤は悪か?.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年7月12日ウェブ掲載された、
発熱に対する治療の有効性とリスクについての論文です。

熱は下げた方が良いのでしょうか、悪いのでしょうか?

これは古くで新しい問題です。

解熱剤で熱を一時的に下げたり、
クーリングと言って冷却材などで身体を直接冷やすことは、
病気により発熱して苦痛を感じている患者さんに対しては、
2000年以上前から一般的に行われている治療です。

勿論熱中症のように、
深部体温の上昇が病気の原因である場合には、
積極的に解熱を図ることが治療としても有効です。

ただ、感染症などで身体が自発的に発熱して、
体温が上昇しているような場合に、
それを下げることが果たして良いことなのかどうか、
というのはまた別の問題です。

熱が出ている状態はつらく、
痛みは苦痛を伴いますから、
一時的にせよ身体を冷やし、
その苦痛を和らげることは、
意味のある治療行為ではあります。

患者さんが楽になることは、
病状の経過に対しても意味のあることだからです。

その一方で熱は身体が自分を守るために、
意味があって出しているのだから、
それを無理に冷やすことは良くない、
という意見があります。

確かに発熱は炎症に伴っていることが多く、
体温が上昇した方が免疫力が高まって、
感染症の予後は良い、というデータもあります。
その一方で高熱は死亡リスクを上昇させ、
予後を悪化させるという報告もあります。

これはおそらくケースバイケースではないかと思われますが、
実際にこれまでに行われた研究は、
その多くが集中治療室の患者さんなど、
特定の特殊なケースで行われているものなので、
より一般的に「熱は下げた方が良いのか?」
というような疑問に、
明確に答えられるような情報を提供してはくれないのです。

今回の研究はこれまでの発熱治療(解熱剤やクーリングを含む)
に対する臨床試験のデータをまとめて解析したメタ解析で、
この問題に対するトータルな検証を行っているものです。

これまでの42の臨床研究に含まれる、
5140人の患者データをまとめて解析したところ、
発熱に対する治療がトータルにみて死亡リスクを低下させたり、
逆に明確に有害な影響をもたらすという根拠は、
確認されませんでした。

つまり、解熱治療をしても、
良い面でも悪い面でも、
病気の予後に影響を与えるという証拠はなかった、
ということになります。

データは条件にばらつきが多く、
その信頼性も総じて高いものではないので、
今回の検証から解熱治療の有効性も有害性も、
完全に否定は出来ませんが、
現状の認識として、
症状が辛い時に解熱剤を適度に使用することは、
個々の判断で行って問題はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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