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皮膚抵抗を利用した血圧測定システム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動や検診などで都内を廻る予定です。
昨日は27名のRT-PCR検査も施行しているので、
夕方からはまだエンドレスの電話掛けと届け出の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デジタルタトゥーの血圧測定.jpg
Nature Nanotechnology誌に、
2022年6月20日ウェブ掲載された、
皮膚に貼るだけで持続的に血圧を測定可能な、
新しい計測システムについての論文です。

血圧測定というのは、
20世紀初頭以降に普及して、
兵士の健康管理などに活用され、
第二次大戦後には世界中で測定されることにより、
高血圧の管理と治療に幅広く使用されました。
その上昇と低下はいずれも身体の危険な状態を示すサインとなります。

このように広く普及して、
医療や健康管理に欠くことの出来ない指標となった血圧ですが、
その測定法については大きな課題があります。

初期の血圧測定は、
動脈の脈波をそのまま測定していたのですが、
それは血管にセンサーを挿入するような方法で、
とても一般に普及可能なものではありませんでした。
その後マンシェットという布を巻き付け、
水銀を利用して聴診器により、
血管から発せられるコロトコフ音という音を聴取することにより、
血圧を簡単に測定する方法が開発され、
水銀は毒性の問題から今は非使用ですが、
原理はそのままに今も活用されています。

ただ、この方法には幾つか問題があります。

まずコロトコフ音が何なのか、
完全には解明されていません。
それがほぼ動脈にセンサーを入れて測定した、
血圧の上下に一致していることは事実ですが、
原理が不明なものを使い続けていてそれで良いのか、
という疑問は残ります。

また、マンシェットに加圧して腕を締め上げ、
一度阻血してから解放するという方法は、
結構ストレスの掛かるもので、
人によっては強い痛みを感じて、
施行すること自体で血圧が上昇してしまい、
正確な血圧の測定になっていないのではないか、
という疑問が生じます。

更にこの方法は一度測定を行うと、
少しインターバルを置かないと再測定出来ないので、
血圧自体は連続しているものですが、
連続して測定することが難しい、
という欠点もあります。

近年アップルウォッチのような端末では、
着けているだけで血圧が測定され数値が表示されます。
これは光センサーにより測定する方法で、
聴診法とは全く別の仕組みですが、
端末のずれにより簡単に数値が変動してしまうなど、
少なくとも医療で使用可能な精度を持っているものではありません。

それでは、
より簡単でストレスがなく、
連続使用が可能で正確な血圧測定法はないのでしょうか?

こちらをご覧下さい。
デジタルタトゥーの仕組み.jpg
これが今回紹介されている、
新しい血圧測定の仕組みです。

バイオインピーダンス・タトゥーという言い方がされていますが、
バーコードのようなシールを手首に貼り付け、
そこのセンサーで皮膚の抵抗を測定することにより、
手首の動脈の動脈波を再現するのです。

これまでの多くの血圧測定法は、
聴診法と測定値を一致させていたのですが、
今回の方法は動脈波の波形と一致させています。
動脈波の波形はメカニズムも明確ですから、
この方式の方が理に適っているという気がします。

この方法では一回のシールの装着により、
300分(5時間)以上の血圧が連続的に測定可能で、
実際の複数の被験者を利用した測定でも、
高い精度が確認されました。

これはまだ研究段階の成果ですが、
今後こうした動脈波を簡便に測定する方法が、
従来の血圧測定に取って変わることは、
間違いのない流れであるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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