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サル痘の臨床症状のまとめ(世界528例の検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

昨日は色々とやることがありながら、
疲れ切って早く寝てしましました。
今日は踏ん張りたいと思っていますが…

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サル痘論文.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年7月21日ウェブ掲載された、
日本でも患者が報告された「サル痘」の、
500例以上の世界の事例をまとめた論文です。

サル痘はポックスウイルス科のDNAウイルスである、
サル痘ウイルスによる感染症で、
サルやウサギ、リスなどのウイルスを保有する動物との接触により、
人間に感染すると考えられています。
その人間への感染は1970年にアフリカのコンゴで初めて確認されました。
その後アフリカでの散発的な流行はあったのですが、
その地域に留まったもので推移していました。

撲滅された天然痘と類似性があり、
その免疫に一定の有効性があると考えられています。

それが、2022年5月以降に西ヨーロッパ全域、
北米のカナダ、アメリカ、南アメリカ、オーストラリアで、
人間から人間への感染が急速に拡大。
WHOが非常事態宣言をするまでに至りました。

日本でも感染事例が確認されたという報道もありました。

今回の論文では、
5大陸16か国で診断された、
トータル528のサル痘確定診断事例をまとめています。

事例の98%はゲイかバイセクシャルの男性で、
75%が白人種、41%はHIVの感染者です。
年齢の中間値は38歳です。

事例の95%では水疱瘡のような水疱性の湿疹があり、
73%は肛門及び性器に病変を持ち、41%では口腔などの粘膜に病変があります。

論文には複数の画像が掲載されています。
このブログは一般向けのものですので、
差しさわりのないと思われるもののみご紹介します。
詳細は原文をご参照下さい。
こちらです。
サル痘画像.jpg
黒人男性の事例ですが、
性交渉でおそらく感染が成立してから、
4日後に性器周辺に水疱性の湿疹が出現。
梅毒が疑われペニシリンが投与されるも改善せず。
湿疹は複数に増加し、
びらんとなり、その部位から採取した検体の遺伝子検査により、
サル痘と診断がなされています。

湿疹に引き続いて、発熱や関節痛、頭痛、
全身のリンパ節腫脹などが認められます。
発熱は62%の事例で報告されています。
29%は他の性行為感染症を併発していました。

感染機会が確認されいる23事例において、
潜伏期の中間値は7日で95%は3から20日に分布しています。
精液の遺伝子検査を施行した32例中29例において、
サル痘遺伝子が検出されています。
入院は主に疼痛などの症状によるもので、
今回の事例中に死亡事例はありません。

このように、
症状は違いますが感染形態としては、
サル痘はHIV感染症とかなり似通った性質があり、
特定はまだされていませんが、
性交渉により感染する可能性が高いようです。

特に性器や肛門周辺に初発する水疱病変については、
先入観を持つことなく、
この病気の可能性も常に想定する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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