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生後3か月からのアレルギー食物摂取の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
3か月からのアレルギー食物暴露の効果.jpg
Lancet誌に2022年6月25日掲載された、
生後3か月からアレルギーを生じやすい食物を、
早期に与える予防法の有効性についての論文です。

食物アレルギーは近年急増しているアレルギー疾患です。
欧米では牛乳、卵、小麦、ピーナツが食物アレルギーの主要なアレルゲンで、
特にピーナツや木の実は自然に耐性を獲得しにくく、
病状が固定化しやすいと考えられています。

一度食物アレルギーを発症しても、
そのアレルゲンを極少量ずつ投与すると、
徐々に耐性が獲得されて、
そのアレルゲンを含む食品を、
食べられるようになることがあります。

乳児期の早期、
たとえば生後3から4か月くらいの時期に、
そうしたアレルゲンに慣れることにより、
将来の食物アレルギーを予防できるのでは、
という考え方があり、
実際に4か月齢での臨床試験で、
一定の有効性が報告されています。

今回の臨床試験はノルウェーとスウェーデンの専門施設において、
妊娠中に対象者の登録を行い、
2397名の新生児を4つの群に分けると、
第1群の597名は何も対策を施行せず、
第2群の575名はアトピー性皮膚炎の予防に有効とされる、
皮膚への保湿剤の使用のみを施行し、
第3群の642名は生後3か月の時点から、
ピーナツバター、牛乳、小麦のおかゆ、スクランブルエッグを、
少量母親の指からかスプーンで少量投与し、
それを少なくとも週に4日投与することを継続、
第4群の583名は皮膚への保湿剤と食品の早期投与を併用します。

その結果、
生後3歳(36か月)の時点での食物アレルギーは、
44名の対象者で認められ、
第1群では596名の2.3%に当たる14名、
第2群では574名の3.0%に当たる17名、
第3群では641名の0.9%に当たる6名、
第4群では583名の1.2%に当たる7名でした。

ピーナツアレルギーは32名に、卵アレルギーは12名に、
牛乳アレルギーは4名に認められています。

ここから、
皮膚の外用療法には明らかな食物アレルギーの予防効果は認められませんでしたが、
食物の早期投与は、
60%(95%CI:0.2から0.8)3歳の時点での食物アレルギーの発症を、
有意に抑制する効果が認められました。

これにより、
全ての赤ちゃんに3か月の時点での食物摂取を試みることにより、
63名に試みて1名の食物アレルギーの発症を、
抑止可能と推計されました。

この予防法の有効性は、
今回の検証でほぼ確認されたと言って良いと思いますが、
その安全性はこの人数の検証では、
実証されたとは言い切れず、
今後どのような対象者に、
どのようにこの予防法を使用するべきなのか、
より詳細で厳密な検証が必要であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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