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低ナトリウム血症に対するSGLT2阻害剤の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
低ナトリウム血症に対するSGLT2阻害剤の効果.jpg
Journal of the American Society of Nephrology誌に、
2020年掲載された、
低ナトリウム血症に糖尿病治療薬を、
使用する試みについての論文です。

この時点より臨床応用の研究は進行しているようですが、
検索した範囲では、
これ以降のあまりまとまった論文が、
見つかりませんでした。

SIADHという病気があります。
血液のナトリウム濃度が低下する、
低ナトリウム血症を起こす代表的な疾患の1つで、
通常脳下垂体後葉から分泌される、
ADH(抗利尿ホルモン)は通常の調節を超えて過剰に分泌され、
それによって身体の水分が増加し、
相対的にナトリウム濃度が低下することによって起こります。

原因は様々で、
脳の病気や肺疾患、ADH産生腫瘍や癌、
薬剤の影響で生じることもあります。
摘出可能な腫瘍や薬剤が原因である場合には、
その原因を除去することにより治療が可能ですが、
多くの場合は原因が不明か除去が困難なので、
ADHを抑制するような薬剤を使用するか、
摂取する水分量を制限するくらいしか方法がありません。
ただ、ADHの受容体拮抗薬は、
高額な薬剤である上に、
微調整が難しく高ナトリウム血症に繋がり易い、
という欠点があります。

SIADHの低ナトリウム血症に対して、
もっと安全で使いやすい治療薬が、
求められているのです。

その候補の1つとして、
注目されているのがSGLT2阻害剤です。

この薬は主にブドウ糖の再吸収を抑制することにより、
血糖値を低下させる作用を持つ2型糖尿病の治療薬です。

この薬はブドウ糖と共にナトリウムの排泄も促進するので、
その意味では低ナトリウム血症には、
むしろ悪いように思われます。
しかし、実際には相対的に水分のみをより多く排泄するので、
血液中のナトリウム濃度は、
上昇する可能性が高いのです。

今回の検証では、
SIADHと診断されて血液のナトリウム濃度が、
130mmol/L未満の低ナトリウム血症を持つ、
トータル88名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は1日の水分量を1リットル未満とする、
水分制限に加えて、
SGLT2阻害剤のエンパグリフロジン(ジャディアンスを1日25㎎で、
4日間使用して、
もう一方は偽薬を使用して、
4日後ナトリウム濃度を比較検証しています。

その結果、
偽薬群では4日後にナトリウム濃度が7mmol/L上昇したのに対して、
ジャディアンス使用群では10上昇していて、
この差は有意と判定されました。
重度の低血糖などの有害事象は認められませんでした。

これはまだ4日のみの検証ですが、
論文化はまだのようですが、
より長期の臨床成績も発表されているようです。
ジャディアンスが糖尿病の患者さんに以外にも、
比較的安全に使用可能であることは、
この薬が心不全の治療薬としても使用されていることから、
ほぼ実証されていますから、
今後SIADHに対する有効な治療の選択肢として、
そのより実用的な検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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