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新型コロナウイルス感染に対する細胞性免疫計測法 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の細胞性免疫定量法.jpg
Nature Biotechnology誌に、
2022年6月13日掲載された、
新型コロナウイルス感染に対する、
細胞性免疫の定量法についての論文です。

新型コロナウイルス感染症に対する身体の免疫には、
まだ不明の点が多いのが実際です。

免疫には液性免疫と細胞性免疫の2種類があり、
通常新型コロナウイルス感染の免疫の指標として、
臨床的に使用されているのは抗体価ですが、
これは液性免疫の指標ではあっても、
細胞性免疫の指標ではありません。

そして、この両者は必ずしも同じに動くという訳ではありません。

たとえば帯状疱疹は、
水痘の原因ウイルスに対する、
細胞性免疫の低下により起こるとされていますが、
これは血液の抗体価を測定しても、
推測することは出来ません。

新型コロナウイルスに関しても、
ワクチンの有効性は、
必ずしも血液の抗体価のみでは判定出来ず、
抗体が低下しても、
細胞性免疫が保たれていれば、
感染予防効果は維持されるとする報告もあります。

問題は細胞性免疫の防御レベルを測定することが、
抗体価のようには簡単ではない、と言う点にあります。

今回の論文は従来の方法より、
簡単に施行可能な細胞性免疫の診断法を解説したものです。

この検査法は患者さんの全血を採血して、
それを新型コロナウイルスの抗原蛋白質と接触させ、
その24時間後に産生されたCXCL10という、
細胞性免疫の活性化に伴って単核球から産生される蛋白質の、
mRNAを定量的に測定するという方法です。

この方法は従来より簡単に検査が可能で、
結果判明までの時間も比較的短く、
新型コロナウイルスに対する細胞性免疫のレベルを、
定量的に測定出来るという利点があります。

今後感染症の免疫やワクチンの有効性を判断する場合、
細胞性免疫と液性免疫の両面からの評価が不可欠であることは間違いなく、
そのための非常に有用な検査法の候補の1つ、
という言い方は可能だと思います。

ただ、そうは言っても、
まだかなり手間の掛かる検査であることは確かで、
今後より実用的で簡便な方法の開発に向けて、
研究の進歩を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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