SSブログ

オミクロン株とデルタクロン株の免疫反応 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
デルタクロン株.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年5月18日に掲載された解説記事ですが、
オミクロン株のBA.3系統の変異株と、
デルタクロン株の性質についての検証結果です。

オミクロン株は当初のBA.1系統から、
BA.2、BA.3と次々と変異を繰り返して流行し、
それ以前に流行したデルタ株とオミクロン株とが融合して、
両者の性質の一部を併せ持った、
通称デルタクロン株まで同定されています。

日本では現状BA.2系統が主流となっているようで、
クリニックで採取した検体のゲノム解析でも、
2から3週間程度前の報告ですが、
解析された事例の全てがBA.2系統となっています。

ただ個別の変異株の性質については、
まだそれほど明確なことが分かっていません。

今回の検証はアメリカにおいて、
元の新型コロナウイルス株と比較した、
BA.3系統とデルタクロン株の免疫的特徴を比較しているものです。

ファイザー・ビオンテック社もしくはモデルナ社製ワクチンを、
2回接種してから3、4週後に採取された検体での検査では、
元の新型コロナウイルス株(D614G変異株)への中和抗体価と比較して、
BA.3系統に対する中和抗体は3.3分の1、
デルタクロン株に対する中和抗体は44.7分の1しか、
誘導はされませんでした。
つまり、元の新型コロナウイルスや現行のワクチン株による免疫は、
オミクロン株の亜系統やデルタクロン株に対しては、
かなり限定的な効果しかない、
ということが推測されます。

デルタ株流行期の入院患者の検体を利用した検査では、
元の新型コロナウイルス株に対する中和抗体価と比較して、
オミクロン株のBA.3系統はほぼ同じ中和抗体価を維持していましたが、
デルタクロン株に対する中和抗体価は137.8分の1しか誘導されませんでした。

オミクロン株の流行期の入院患者の検体を利用した検査では、
元の新型コロナウイルス株に対する中和抗体価と比較して、
オミクロン株のBA.3系統とデルタクロン株の中和抗体価は、
ほぼ同等でした。

このように、
オミクロン株のBA.3系統は、
それ以前の株に対する免疫を回避するような傾向はなく、
その一方でデルタクロン株に関しては、
オミクロン株やデルタ株の免疫もあまり有効ではなく、
それ以前の多くの変異株に対しても、
抵抗性である可能性が高いと想定されました。

mRNAワクチンを複数回接種した場合の免疫は、
元の新型コロナウイルスに感染した際の免疫より、
遥かに強い免疫を誘導するため、
確かにその後の変異株に対しても一定の有効性はあるのですが、
オミクロン株以降の変異株に対する有効性はかなり低いもので、
今後は今の状況に合わせたワクチンの導入が、
急務であるように思います。
一方で変異株の中には性質がおとなしく、
より通常感冒への移行を、
期待させるものがある一方、
免疫も逃避する傾向が強く感染力の強いものもあり、
まだ楽観をするべき状況ではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。