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大腸癌検診の開始年齢は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸癌検診と年齢.jpg
JAMA Oncology誌に2022年5月5日ウェブ掲載された、
大腸癌検診の開始年齢についての論文です。

便潜血検査と大腸内視鏡検査を、
適宜組み合わせた大腸癌検診は、
世界的にもその有効性が確認されている、
数少ない癌スクリーニングです。

日本では便潜血を一次検査とした大腸癌検診が、
40歳以上で推奨されていますが、
世界的には概ね50歳以上を推奨とするという地域が多いようです。
ただ、アメリカの専門部会では、
数年前から40歳代からのスクリーニングを推奨しています。
これは大腸癌の発症年齢が低年齢化していて、
50歳未満での事例増加が問題となっているためです。
ただ、これまでの臨床データの多くは、
50歳以降を対象年齢としているものなので、
40歳代でのスクリーニング開始に、
どの程度の有効性があるのかについては、
まだ実証的なデータは少ないのが実際です。

そこで今回の研究では、
アメリカの女性の看護師を対象とした、
大規模な長期の疫学研究のデータを二次利用して、
大腸内視鏡検査の施行年齢とその予後を、
比較検証しています。

対象は111801人の女性看護師で、
登録時の年齢は26から46歳、
1991年から2017年に渡り健康観察が継続されています。

26年を超える観察期間中に、519例の大腸癌が診断されていて、
何らかの理由で大腸内視鏡検査を45歳以前で実施した人は、
実施しない人と比較して、
その後の大腸癌のリスクが63%(95%CI:0.26から0.53)有意に低下していました。
45歳から49歳で内視鏡検査を実施すると、
同様のリスクは57%(95%CI:0.29から0.62)、
50歳から54歳で内視鏡検査を実施すると53%(95%CI:0.35から0.62)、
55歳以上で内視鏡検査を実施すると54%(95%CI:0.30から0.69)の低下、
というように算出されていて、
確かに50歳以上での検査の有効性は明確ですが、
50歳未満で検査を実施することで、
より大腸癌のリスクの低減に結び付いていることが分かります。

50歳から54歳で大腸内視鏡検査を施行した人と比較して、
45から49歳でその施行を実施した人は、
60歳までに診断される大腸癌の累積の罹患率を、
10万人当たり72人減少させる有効性があると試算されました。

これは症状や家族歴などの理由で、
大腸内視鏡検査を施行した人が主体で、
大腸癌検診そのものの有効性を検証しているものではない点に、
注意が必要ですが、
40代での大腸内視鏡検査によって、
その後の大腸癌のリスクが低減されることは間違いがなく、
今後大腸癌検診の対象年齢とその方法については、
より実証的な議論が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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