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治療中の甲状腺機能と心血管疾患の生命予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺の治療と心血管疾患死亡リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年5月12日ウェブ掲載された、
甲状腺ホルモン剤による治療と、
心血管疾患の生命予後との関連を検証した論文です。

甲状腺ホルモン製剤(通常はT4製剤)は、
主に甲状腺機能低下症の治療として用いられる薬剤で、
それ以外に甲状腺腫瘍の増大を抑えるために、
TSH抑制のために使用されることもあります。

甲状腺ホルモン製剤を内服中の患者さんは、
甲状腺機能の指標であるTSHの数値が基準値内のこともあり、
薬が不足していたり、飲み忘れがあったりすると、
甲状腺機能低下(TSH高値)となることもあり、
また薬が多すぎたり、もともとTSHを抑制する目的で使用されていると、
甲状腺機能更新(TSH低値)となることもあります。

一般的に甲状腺機能低下症も、
甲状腺機能亢進症も、
正常な甲状腺機能を持つ人と比較すると、
心血管疾患のリスクが増加すると考えられていて、
それを裏打ちするようなデータも存在しています。

それでは、
甲状腺ホルモン製剤を使用中の患者さんでも、
治療中の甲状腺機能によって、
心血管疾患のリスクには差があるのでしょうか?

今回の研究では、
アメリカの退役軍人の医療保険データを活用して、
甲状腺ホルモン製剤を使用中の患者さんの甲状腺機能と、
心血管疾患による死亡リスクとの関連を検証しています。
観察期間の中間値は4年で、年齢の中間値は67歳、
大多数は男性です。

18歳以上で甲状腺ホルモン製剤を使用している、
トータル705307名のデータを解析したところ、
甲状腺機能の指標であるTSHが0.5から5.5mIU/Lの基準値である場合と比較して、
0.1未満と医原性甲状腺機能亢進症の状態にあると、
心血管疾患による死亡リスクは、
1.39倍(95%CI:1.32から1.47)有意に増加していました。
一方でTSHが20を超えるという甲状腺機能低下症の状態では、
心血管疾患による死亡リスクは、
2.67倍(95%CI:2.55から2.80)こちらも有意に増加していました。

このように
甲状腺機能が治療により極端に機能低下や機能亢進に振れると、
それ自体が心血管疾患の死亡リスクを増加させる要因になるので、
甲状腺ホルモン製剤使用時の甲状腺機能は、
基準値をそれほど逸脱しない範囲に、
留めることが重要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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