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高齢者の高血圧治療はどのくらい続ければ効果があるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の血圧コントロールの有効期間.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年5月9日ウェブ掲載された、
高齢者の降圧治療の心血管疾患予防効果と、
その発現までの治療期間を検証した論文です。

「高血圧の薬を飲むと、
死ぬまで止められないのですよね」
というような話は、
特にお薬を飲むことに抵抗のある患者さんからは、
よく聞かれる質問です。

僕は一応「薬の始め方・止め方」という本も書いているので、
「そんなことはありませんよ」というお話はするのですが、
勿論1か月程度の降圧治療に、
それほどの効果のないことは間違いがありません。

高血圧には、
上の血圧が200mmHgを超えるような、
すぐにでも下げないと、
脳卒中などのリスクがある、
もしくはもう起こっている可能性がある、
というような緊急を要するような状況もありますが、
多くの高血圧はそこまでの緊急性はなく、
生活改善と共に、降圧剤を使用して血圧コントロールをするのは、
主に脳卒中や心筋梗塞などの、
将来的な心血管疾患の予防のためです。

この心血管疾患の予防のためには、
ある程度の期間の血圧コントロールの継続が必要です。

通常心血管疾患の発症リスクを、
その後5年で算出することが多いのは、
概ね5年は血圧コントロールの継続が、
そのためには必要であることを意味しています。

特に治療の継続期間が問題となるのは、
患者が高齢者である場合で、
たとえば持病があって、
その後5年以内に亡くなる可能性が高いということになると、
その時点からの降圧剤の使用は、
必ずしも必要性があるとは言えなくなります。

今回の研究はこれまでの6つの精度の高い臨床試験に含まれる、
降圧治療を施行した60歳以上の27414名のデータを、
その観点からまとめて解析したものです。

その結果、
収縮期血圧が140mmHg未満を目標として、
降圧治療を施行すると、
心血管疾患の発症リスクを、
トータルでは21%(95%CI:0.71から0.81)、
有意に低下させていました。

これを治療開始後からの期間で解析すると、
500人の治療当たり1人の心血管疾患を減少させるためには、
平均で9.1ヶ月(95%CI:4.0から20.6)が必要で、
これを200人に1人とするには19.1ヶ月(95%CI:10.9から34.2)、
100人に1人とするには34.4ヶ月(95%CI:22.7から59.8)、
が必要と算出されました。

このように、
60歳以上での収縮血圧140mmHg未満を目指す降圧治療は、
予測される余命が3年以上ある患者には適している可能性がありますが、
余命が1年未満と想定されるような場合には、
あまり意味のない可能性が高いと考えられました。

これはやや極端で機械的な分析なので、
個別の事例によって判断される必要がありますが、
降圧剤による治療というものは、
その患者さんの今後の人生を必要な因子として考慮に入れた上で、
その継続を考える必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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