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軽度認知障害(MCI)の介入法(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
MCIの予防法.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年5月3日ウェブ掲載された、
軽度認知機能障害(MCI)の治療についての論文です。

軽度認知機能障害(MCI: Mild Congnitive Impairment)と言うのは、
正常の老化と認知症との間のどちらでもない状態のことで、
通常物忘れの自覚が本人にあり、
家族も以前はなかったような忘れ方や言動がある、
という訴えがあるのですが、
ミニメンタルテストのような一般的な認知症検査では、
認知症の基準を満たさない、という状態のことです。

この中には、
その後急激な悪化はすることなく、
結果として正常な老化と判断される場合と、
経過とともに進行して認知症の基準を満たすようになり、
結果的には認知症の初期症状であった、
というように判断される場合とがあります。

この両者のいずれであるかは、
経過をみないと分からないというのが、
軽度認知障害の厄介なところで、
一部で両者を見分けるのに有効な血液検査と称するものが、
開発され活用されていますが、
それがどの程度正確な診断に結び付くものであるかは、
まだ明確ではないと思います。

軽度認知障害と判断された場合には、
それが更なる認知機能の低下に進行しないように、
対策を講じる必要があります。

ただ、現行認知症に使用されているような薬剤は、
敢くまで認知症と診断された場合の進行抑制にのみ、
その有効性が確認されているので、
副作用や有害事象もあることを考えれば、
まだ病気とは言えない段階で使用することは、
適切ではありません。

そうなるとその時点での進行抑制の介入としては、
生活習慣病の管理や、
運動、ゲームなど脳を活用する娯楽の習慣化、
健康的な食生活、ストレスのコントロール、
などの一般的なものにならざるを得ません。

そうした生活への介入の中で、
最近注目されているのが、
複数領域への介入(Mutidomain interventions)という考え方です。

これはどういうものかと言うと、
たとえば読書などの脳を刺激するインドアの習慣と、
運動などのアウトドアの習慣など、
複数の認知機能に良い影響を与えると想定される活動を、
2つ以上同時に習慣化するという方法です。

こうした介入により、
単独の運動療法などと比較して、
より高い効果が得られるのではないかと考えられているのです。

しかし、実際にはそれほど実証的に、
そうした介入の効果が検証されている、
という訳ではありません。

今回の研究はこれまでに試みられた複数領域への介入が、
単独の介入と比較して、
有効であるかどうかを、
これまでの臨床データをまとめて解析する、
メタ解析という手法で検証しているものです。

これまでの28の臨床研究で登録された、
トータルで2711名の患者のデータをまとめて解析したところ、
単独の方法による介入と比較して、
運動と認知刺激など2つ以上の方法を併用すると、
トータルな認知機能や記憶機能など多くの分野において、
より認知機能の改善に結び付いていたと解析されました。

このように、
運動と知的ゲームの習慣を同時に持つなど、
脳の複数領域を刺激するような習慣を持つことは、
現状最も有効な軽度認知障害への介入法であると言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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