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胸部痛の診断における冠動脈CTとカテーテル検査の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CTとカテーテル検査の優先度.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年4月28日ウェブ掲載された、
胸部痛の診断のための検査を比較した論文です。

僕は大学病院時代に、
一時期循環器の専門診療に従事していました。
心臓カテーテル検査やペースメーカーの植え込みなどを、
一通り研修して、
通常の診断カテなら一通りは出来、
ペースメーカーの植え込みも出来る、
というくらいまでのスキルには達していました。
考えるともう25年以上前のことですから、
時の流れには恐ろしいものを感じてしまいます。

当時の胸痛の診断は、
基本的には症状から狭心症が疑われれば、
速やかにカテーテル検査で確認する、
というのが普通でした。
大学病院ではその前に運動負荷検査や、
心筋シンチをすることもありましたが、
地域の基幹病院や総合病院クラスでは、
「まずは心カテ」というのが、
循環器の専門医のいる施設での合言葉でした。

それが大きく変わるきっかけとなったのが、
冠動脈CTの登場です。

CT検査の技術が格段に進歩し、
造影CT検査の画像を緻密に再構成することにより、
カテーテルで心臓の血管の造影検査をした画像と、
遜色のない画像が得られるようになったのです。

これは画期的なことでした。

心臓カテーテル検査は熟練した医師が施行すれば、
診断カテなら10分程度で終了します。
ただ、血管に針を刺してカテーテルを挿入するのですから、
出血などの合併症のリスクはありますし、
患者さんの負担も大きい検査ではあります。

それに比べて冠動脈CT検査は、
放射線の被曝はかなりありますが、
それ以外の合併症は、
心臓カテーテル検査と比較すれば格段に少なく、
患者さんへの負担自体も格段に少ないという特徴があります。

ただ、冠動脈CTの診断と、
心臓カテーテル検査による診断は、
完全に同じという訳ではないので、
患者さんの予後に与える影響については、
これまで実証的なデータが不足していました。

今回の研究では、
ヨーロッパの26か所の専門施設において、
虚血性心疾患の中等度の可能性が症状などから推測される、
3561名の患者をくじ引きで2つの群に分け、
一方は冠動脈CT検査を施行し、
もう一方は心臓カテーテル検査を施行して、
その経過を3.5年以上検証しています。

その結果、
経過中の心血管疾患による死亡、
心筋梗塞や脳卒中の発症を併せたリスクには、
初期診断を心臓カテーテル検査で行っても、
冠動脈CT検査で行っても有意な差はなく、
その一方で手技による合併症は、
明確に心臓カテーテル検査の方が多くなっていました。

このように、
比較的長期の経過を比較しても、
CTによる診断と心臓カテーテル検査による診断には差はなく、
その施行のリスクには明らかな差が確認されました。

勿論症状や心電図所見などから、
急性冠症候群が強く疑われる時には、
カテーテル検査で早期に診断して、
治療に結び付けることに変わりはありませんが、
緊急性のない胸部痛の診断には、
まずは冠動脈CT検査という考え方は、
より実証的なものになったと言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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