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抗凝固剤の種類と鼻血リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
鼻血のリスク.jpg
Journal of Internal Medicine誌に、
2022年4月12日ウェブ掲載された、
抗凝固剤の鼻血リスクについての論文です。

心房細動という不整脈における、
脳塞栓症などの予防や、
下肢静脈血栓塞栓症における、
肺血栓塞栓症の予防などには、
抗凝固剤という、
強力に血液の凝固を抑える薬が使用されます。

古くから使用されているのが、
注射薬のヘパリンと経口薬のワルファリンで、
最近その利便性からその利用が増えているのが、
直接作用型経口抗凝固剤と呼ばれる薬です。
ダビガトラン(プラザキサ)やリバロキサバン(イグザレルト)、
アピキサバン(エリキュース)、
などがそれに当たります。

この直接作用型経口抗凝固剤は、
これまでの臨床試験などの結果より、
ワルファリンに匹敵する塞栓症予防効果があり、
脳出血などの重篤な出血系の合併症は少なく、
他の薬や食品などにより、
その作用が変動することも少ないので、
現在ではワルファリンに替わって、
こうした抗凝固剤の主流となっています。

抗凝固剤の副作用として問題となるのは、
消化管出血や脳出血などの重症の出血系の合併症です。
しかし、実際には出血系の合併症で最も多いのは鼻血です。

抗凝固剤の臨床試験においては、
10から16%の使用者が、
鼻血のエピソードを報告しています。
ただ、鼻血は軽症の合併症と判断されることが殆どなので、
問題となるような有害事象としては、
カウントされていないことが多いのです。

鼻血は確かに一般的な症状ではありますが、
止血しにくいケースも多く、
救急で病院を受診することも少なからずあります。

従って、鼻血の発症率に、
ワルファリンと直接作用型経口抗凝固剤との間で、
明確な違いがあるかどうかは、
薬剤の選択においても重要な要素であると思いますが、
これまであまりそうしたデータはありませんでした。

今回の研究はアイスランドにおいて、
ワルファリンと、
直接作用型経口抗凝固剤である、
アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバンの、
5年以上の使用データを解析して、
その鼻血の発症リスクを比較しているものです。

2098名のアピキサバン使用者と、
474名のダビガトラン使用者、3106名のリバロキサバン使用者、
1403名のワルファリン使用者を解析した結果、
観察期間中に93名が臨床的に問題となるような鼻血を発症していて、
そのうちの11名が重症の事例でした。

ワルファリン使用患者の鼻血罹患率が、
年間100人当たり2.2件であったのに対して、
ダビガトラン使用患者は鼻血の報告はなく、
アピキサバン使用患者は0.6件、
リバロキサバン使用患者は1.0件でした。
ワルファリン使用者と比較して、
直接作用型経口抗凝固剤はいずれも鼻血リスクは、
明確に低くなっていました。
それを図示したものがこちらになります。
鼻血のリスクの図.jpg
ダビガトラン群は事例は少なく、
鼻血の事例も報告されていないので、
この図からは省かれています。

鼻血の多くは軽症で対応可能なものですが、
実際には不快でストレスに感じることも多く、
こうした情報は薬剤の選択において、
意外に重要なもののようにも思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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