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家族性高コレステロール血症と認知症リスク(ノルウェーの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
家族性高コレステロール血症と認知症リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年4月19日ウェブ掲載された、
認知症リスクと家族性高コレステロール血症との、
関連を検証した論文です。

血液のLDLコレステロールが高いことが、
動脈硬化の進行のリスクとなり、
脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクとなることは、
多くの信頼のおける疫学データにより、
実証された事実です。

ただ、LDLコレステロールの高値と認知症との関連については、
必ずしも実証されている訳ではありません。

認知症の中で特に脳血管性認知症については、
脳の血管の動脈硬化性変化が、
その発症に大きな影響を与えていることは間違いがなく、
その点からはコレステロールの高値が、
認知症のリスクにもなることは、
当然推測がされるところです。

ただ、認知症の中で大きな比率を占める、
アルツハイマー型認知症については、
コレステロールの高値が影響しているという報告がある一方、
関連がないという報告もあって一定していません。

今回の研究はノルウェーにおいて、
遺伝子の変異のためにLDLコレステロールが生まれつき異常高値となり、
高率に心血管疾患を発症する、
家族性高コレステロール血症(FH)の患者さん、
トータル3520名を10年間観察し、
認知症の発症リスクとコレステロール値、
及びコレステロール降下剤のスタチン使用と、
認知症リスクとの関連を検証しています。

その結果家族性高コレステロール血症の患者においても、
認知症の多くは70歳以上で発症していて、
コントロール群と比較して認知症リスクは、
認知症のタイプに関わらす有意な増加は認められませんでした。
また、コレステロール降下剤のスタチンの累積使用量と認知症リスクとの間にも、
明確な関連は認められませんでした。

今回の検証では、
コレステロールの高値と認知症との間には、
そのタイプを問わず明確な関連はなく、
スタチンの使用も認知症リスクを低下させることはありませんでした。

この結果のみをもって、
コレステロール値と認知症が無関係とは言えませんが、
脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクと、
認知症のリスクは同一ではなく、
それぞれ別個に検証する必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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