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COVID-19後遺症の特徴とその対策(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19後遺症の特徴と対策(イギリスの疫学データ).jpg
The Lancet Respiratory Medicine誌に、
2022年4月23日ウェブ掲載された、
新型コロナの後遺症についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、
肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が、
新たに生じることも多いことは、
国内外を問わずこれまでに多くの報告があります。

主にヨーロッパでは、COVID-19罹患後症候群という概念で、
初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、
以前ご紹介したアメリカの研究では、
より広く発症から21日以上持続する体調不良を、
シンプルに後遺症と表現していました。
それ以外にロングCOVID(Long COVID)、
というような表現も使用されています。
要するに、まだ統一された概念ではないようです。
今回のイギリスの論文では、
ロングCOVIDという表現がされています。

日本でも罹患後症状、後遺症、後遺障害と、
多くの表現が使用されていて、あまり一貫性のない状態です。
保険病名としては、
COVID-19後遺症という記載も認められています。

いずれにしても、
概ね罹患後3ヶ月を過ぎても、
体調が罹患前と比べて悪い場合に、
そうした表現がされることが多いようです。

後遺症外来と称するものも複数開かれていて、
慢性疲労に使用されるような漢方薬やビタミン剤、
一部のアミノ酸製剤やその誘導体などが使用されているようですが、
明確にその効果が立証されているようなものは現時点ではありません。

今回の研究はイギリスにおいて、
18歳以上で新型コロナウイルス感染症のために入院していて退院し、
その後5ヶ月の時点での状態を診察した、
2320名の経過を1年間追ったものです。
実際には5ヶ月の時点で1965名が解析対象となり、
1年の経過を観察しえたのはそのうちの807名で、
804名が解析対象となっています。

退院後5ヶ月の時点で、
完全治癒つまり罹患前と同じ状態に戻っていたのは、
1965名のうち25.5%に当たる501名で、
1年後において完全治癒していたのは、
804名のうち28.9%に当たる232名でした。

つまり、5ヶ月の時点で後遺症状があった人は、
1年の時点でもあまり変わってはいない、
ということになります。

どういう人が持続的な症状のリスクがあるかで解析すると、
女性、肥満者、人口呼吸器を装着した重症の患者で、
より症状持続のリスクが高いと解析されました。

持続症状と関連のある検査値の解析では、
特に記憶障害や集中力低下などの認知機能低下の強い患者において、
血液中の炎症マーカーであるIL6濃度の上昇が認められました。

IL6は臨床的にも測定はし易い検査値で、
実際にIL6の抗体を治療に使用するような試みも、
研究レベルでは行なわれています。

今回のデータは今後のCOVID-19後遺症の治療の端緒となるもので、
今後のより詳細な検証と、
治療の開発に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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