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パルスオキシメーターの利用は新型コロナ感染の予後を改善するのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
パルスオキシメーターの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年4月6日ウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナの自宅療養における、
パルスオキシメーターの有効性を検証した内容です。

パルスオキシメーターは指先の先端を挟む、
大き目のクリップのような医療器具で、
身体の酸素の状態を示す、
動脈血酸素飽和度という指標を、
皮膚に当てた光の吸収率から簡便に推測することが出来ます。

その数値が概ね96%を超えていれば正常で、
それを下回ると何らかの原因により、
低酸素の状態になっていると判断します。

元々は医療機関で使用する医療器具でしたが、
新型コロナの流行以降、
自宅で酸素飽和度を測定して、
新型コロナの重症化や肺炎に備えよう、
という考えが広まり、
個人的に購入される方も増えましたし、
行政も自宅療養中の患者に対して、
パルスオキシメーターの借与や使用を、
積極的に行っています。

それでは、通常の健康観察と比較して、
パルスオキシメーターの自宅での使用は、
新型コロナの患者の予後を改善するのでしょうか?

その点については実はあまり正確なことが分かっていません。

自宅療養の患者に対して、
日々の症状や体調などを報告してもらい、
重症化の早期判断に繋げるようなリモートモニタリングについては、
その有効性が臨床試験において確認されています。
しかし、そこにパルスオキシメーターの使用を付加した時に、
より効果が高まるかについての実証的なデータは乏しいのが実際なのです。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
1041名の新型コロナの患者を通常のリモートモニタリングによる症状観察に、
1056名の患者をそれに加えてパルスオキシメーターによる自己測定を付加して、
その予後を比較検証しています。

その結果、
患者の生命予後や入院のリスクに、
両群で明確な差は認められませんでした。
パルスオキシメーターを使用すると、
「数値が低いので心配」というような、
電話での連絡は増えるのですが、
それが患者の予後に、
明確な影響を与えるということはなかったのです。

先日の記事でも説明したように、
パルスオキシメーターの数値は実際には、
それほど安定しているものではなく、
症状がなくて数値が低い場合の多くは測定の状況によるもので、
実際の病状の悪化とは無関係のことが多いことが、
こうした結果に繋がっているように思われます。

自宅療養でのパルスオキシメーターの効果的な活用については、
再度冷静で科学的な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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