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糖尿病におけるスタチン治療の薬剤比較(2022年ネットワークメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールとスタチンの有用性メタ解析.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年3月24日ウェブ掲載された、
コレステロール降下剤の糖尿病患者における効果比較を行った、
メタ解析の論文です。

血液中のLDLコレステロールの値が高いと、
動脈硬化進行のリスクとなり、
心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高まります。
特にそのリスクが高いのは糖尿病の患者さんの場合です。

一方で善玉と呼ばれることのあるHDLコレステロールの値が低いことも、
同様に動脈硬化のリスクになります。

その2つのリスクを一体化した指標として、
non-HDLコレステロールという指標があります。
これは総コレステロールからHDLコレステロールの値を引き算したもので、
近年の検討では、
LDLコレステロール単独よりも、
non-HDLコレステロールを指標として治療をした方が、
より動脈硬化の施行予防になるという、
糖尿病の患者さんを用いたデータが発表されています。

コレステロール降下療法で主に使用されるのは、
スタチンと呼ばれる薬剤です。
アトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、
などが代表的なスタチン製剤です。

ただ、その治療効果の判定は、
主にLDLコレステロールの数値のみで行なわれているので、
non-HDLコレステロールへの有効性が、
同様に認められるとは限りません。

今回の検証は糖尿病(1型2型双方を含む)の患者さんに、
スタチンを使用してその有効性を検証した、
これまでの臨床データをまとめて解析することで、
どのスタチンがより効果的に、
non-HDLコレステロールを低下させるのかを比較検証しているものです。

これまでの42の介入試験に含まれる、
トータルで11698名のデータをまとめて解析したところ、
最も強くnon-HDLコレステロールを低下させていたのは、
ロスバスタチンを1日40から80mg使用した場合で、
それに次いで有効であったのは、
シンバスタチンを1日80mg以上、
アトルバスタチンを1日40mg以上使用した場合でした。

また一度心血管疾患に罹患後の再発予防の使用においては、
アトルバスタチンを1日40mg以上使用することが、
最も強くnon-HDLコレステロールを低下させていました。

今回の検証は実際の心血管疾患の予防効果を比較したものではないので、
その点は注意して判断する必要がありますが、
糖尿病の患者さんへの使用には、
これまでのエビデンスとして、
アトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンの使用が、
non-HDLコレステロールの低下のためには、
有用性が高いと考えて良いようです。

ただ、日本の添付文書においては、
シンバスタチンとロスバスタチンは1日20mgが最高用量で、
アトルバスタチンは40mgが最高用量ですから、
海外のガイドラインに沿って考えると、
有効な選択肢はアトルバスタチンの40mg使用以外にはないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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