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「余命10年」(藤井道人監督映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
余命10年.jpg
藤井道人監督の新作映画が今ロードショー公開されています。

実話に基づくフィクションが原作で、
難病もので純愛ものというかなり手垢の付いた素材です。

どんなものかなあ、と思って観に行ったのですが、
さすがのクオリティなんですよね。
感心しました。

藤井監督は生粋の映画マニア(シネフィル)なんだと思うのですね。

恋愛映画も社会派映画もヤクザ映画も、
みんな好きなんですね。
それで、そのジャンルの映画の依頼が来れば、
そのジャンルの過去の名作を下敷きにしながら、
そのジャンルにおける一番を作ろうとして、
自分なりの完璧を目指すのだと思います。

今回は最高に美しい純愛物を作ろう、
最高の泣かせの場面を作ろう、
最高の縁切り場面を作ろう、
桜の花を一番綺麗に撮ってやろう、
という感じだと思うのですね。
それに加えてメインの小松菜奈さんと坂口健太郎さんの、
代表作を作ってやろう、
という意気込みも感じられます。
そしてその大それた目標に、
ほぼ達していると思えるのが監督の凄さだと思います。

掴みが上手いよね。
最初の数分で所謂難病もののクライマックスを、
あらすじみたいにやってしまうんですね。
それから徐に導入に入るでしょ。
桜の美しさは絶品ですよね。
主人公の撮るムービーの画像が、
主観ショットを不自然でないものにして、
ナレーションと融合させているのも技巧的ですよね。
内容が共感を呼ぶかどうかはともかくとして、
映像のクオリティは充分世界水準だと思います。

これ2011年から2017年という時間を明記していて、
その辺りは「花束みたいな恋をした」と一緒なんですね。
日本がおそらく最大の混迷と絶望の中にある、
破滅の岸にあるようなこの時間を、
どうフィクションとして描こうかと思った時に、
「それはもう無理だよ、今やるとすれば、
そんな時間の中で必死にいつも通りに生きている、
ささやかな生きざまを切り取るしかない」
ということなのだと思います。

物語の裏に覚悟があるんですね。
それがこの映画を、
1段格調高く見せている理由だと思います。

小松菜奈さんと坂口健太郎さんは抜群ですね。
絵空事なのに血が通っていて、
リアルな質感がありますもんね。

唯一音楽はちょっと違うかな、という気はしました。
アニメなら全然これでいいと思うんですけどね。
映像をやや殺しているような気がしました。
ただ、これはもう好みの問題で、
これを良いと感じる人も勿論いるのだと思います。

いずれにしても、
物凄くベタな純愛映画で難病ものなのですが、
それでいて間違いなく藤井監督の映画にもなっている力作で、
映像の美しさだけでも一見の価値は充分にあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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