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左房機能と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療は産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
左房機能と認知症.jpg
JAMA誌に2022年3月22日掲載された、
心房機能と認知症リスクについての論文です。

心臓には左心房、左心室、右心房、右心室の4つの部屋があり、
心臓の機能に関わる重篤な異常は、
主に左心室の肥大や機能の低下による、
というのが従来の定説でした。

実際左心室の肥大や機能の低下は、
心臓そのものの機能低下に直結しますし、
心臓の超音波などの検査においても、
左心室の異常は簡単に検出出来るので、
それ以外の部位の異常は、
あまり注意が払われない傾向があったのです。

心房細動という不整脈があります。

これは心臓の心房という部分が、
けいれんのような不規則な動きをする病気ですが、
弁膜症や高血圧、糖尿病などが誘因として想定され、
心房そのものの異常としては、
捉えられないきらいがありました。

ただ、その考え方も近年変わりつつあるようです。

心房ミオパチー(atrial myopathy)という病名があります。

これは心房を構成する筋肉の障害ですが、
心房の筋肉に何らかの原因により炎症が起こり、
それが筋肉の障害から線維化を起こして、
心房機能が低下するという経過を辿ります。

心房機能が低下すれば、
当然心房細動の原因となります。

実は心房細動の主な原因は高血圧などではなく、
この心房ミオパチーではないか、という考え方があるのです。

心房細動があると、
血栓による脳梗塞が起こりやすくなります。

それでは、心房機能の低下と認知症のような脳の病気との間には、
何らかの関連があるのでしょうか?

今回の研究はその点を検証したものです。

アメリカで登録時点で45から64歳の一般住民、
トータル4096人を中間値で6年以上観察し、
その間の認知症の発症と心臓超音波検査における左房機能の指標との関連を、
比較検証しています。

その結果、
左房のリザーバー機能の指標が低いと、
認知症リスクが1.98倍(95%CI:1.42から2.75)有意に増加しており、
それ以外にもポンプ機能など多くの左房機能の指標と、
認知症リスクとの間に有意な関連が認められました。
この関連は心房細動や脳梗塞を発症した事例を除外しても認められ、
左房の大きさのみとの比較では認められませんでした。

つまり、心房細動まで至らないような、
軽度の心房ミオパチーの変化においても、
認知症リスクは増加することを示唆する結果です。

心臓と認知症とのこの関連は非常に興味深く、
そのメカニズムの解明を含めて、
今後より詳細な検証がなされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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