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慢性の虚血性心疾患患者に対するコルヒチンの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コルヒチンの心血管疾患予防効果.jpg
Circulation誌に2022年2月22日掲載された、
リサーチレターですが、
痛風発作に使用する抗炎症剤を、
虚血性心疾患の予後改善に使用するという、
興味深い試みについての内容です。

動脈硬化の発生と進行において、
組織障害から炎症性サイトカインなどで惹起される炎症が、
中心的な役割を果たしていることは間違いがありません。

そうであるならば、
動脈硬化の進行予防や心血管疾患の再発予防のために、
炎症を抑えるような治療が必要である筈です。

しかし、
実際にはスタチンや低用量アスピリンなど、
その主作用以外に抗炎症作用のある薬が、
治療に使用されていますが、
直接的に炎症を抑えることが主作用の薬剤が、
臨床に応用されている、
ということはありません。

炎症性サイトカインの代表である、
インターロイキン1βを阻害するカナキヌマブという薬剤を、
慢性の虚血性心疾患に使用した臨床試験の結果が、
2017年のNew England…誌に掲載されましたが、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞などを併せたリスクは、
15%有意に低下したものの、
重篤な感染症のリスクを増加させており、
心血管疾患によるリスクの低下も、
主に非致死性の心筋梗塞の低下のみで、
満足のゆく結果とはなりませんでした。

コルヒチンという薬があります。

主に痛風発作の初期段階の治療に使用されている薬剤ですが、
この薬は細胞内にある微小管と呼ばれる構造の、
機能を低下させるという特殊な作用を持ち、
白血球の活動も低下させて炎症を抑制する働きがあります。

つまり、抗炎症作用のある薬です。

そこで最近になり、
急性心筋梗塞後30日以内の患者さんに対して、
通常治療に上乗せしてコルヒチンを使用する臨床試験(COLCOT研究)と、
慢性の虚血性心疾患で治療中の患者さんに対して、
通常治療に上乗せしてコルヒチンを使用する臨床試験(LoDoCo2研究)が施行されました。

そのうちのCOLCOT研究の臨床試験結果は、
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に論文が掲載され、
掲載時期にブログ記事にしています。

急性心筋梗塞を起こして30日以内の患者さん、
トータル4745名を患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はコルヒチンを1日0.5mg使用継続し、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で22.6か月の経過観察を行なっています。

その結果、
心血管疾患による死亡と心停止、心筋梗塞、脳卒中、
カテーテル治療を要する狭心症を併せたリスクは、
偽薬と比較してコルヒチン群では、
23%(95%CI; 0.61から0.96)有意に低下していました。

個別のリスクで見ると、
脳卒中のリスクが74%(95%CI: 0.10から0.70)、
カテーテル治療を要した狭心症が50%(95%CI: 0.31から0.81)と、
いずれも有意に低下していましたが、
それ以外のリスクは有意な低下はありませんでした。
コルヒチンの有害事象は主に下痢で、
感染症の発症については両群で有意差はありませんでした。

もう1つのコルヒチン関連の臨床試験は、
LoDoCo2研究として報告され、その長期の有効性を解析したのが、
今回のリサーチレターです。

慢性の虚血性心疾患を持ち、
最低でも6ヶ月は安定した状態にある35から82歳の5522名を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はコルヒチンを1日0.5mg使用して、
もう一方は偽薬を使用して、
中間値で28.6ヶ月の経過観察を行なっています。

その結果、
観察期間中に心血管疾患による死亡、急性心筋梗塞、
虚血性脳卒中、虚血性心疾患のカテーテル治療を併せたリスクは、
1年毎の解析でコルヒチン群で有意なリスク低下を認めていて、
4年目までのトータルな解析では、
そのリスクは47%(95%CI:0.33から0.87)有意に低下していました。

このように精度の高い2種類の臨床試験において、
虚血性心疾患患者の予後改善に、
コルヒチンの有効性が確認された意義は大きく、
これが今後の診療ガイドラインなどに、
反映されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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