新型コロナワクチン接種後の心筋炎と心膜炎リスク(デンマークの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Medical Journal誌に、
2021年12 月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
心筋炎と心膜炎のリスクについての論文です。
この問題はこれまでにも何度も検証され、
論文やレターはブログでも何度も紹介しています。
新型コロナウイルス感染症予防のための、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンが、
その有効性において高い効果を上げていることは間違いがありません。
その安全性についても、
概ね満足のゆくデータが得られています。
ただ、幾つか気になる報告もあり、
その中で一番注目されているものの1つが、
ワクチン接種後の心筋炎や心膜炎の発症リスクの増加です。
これは報告の事例の多くが、
10代の男性であることに特徴があり、
その年齢層での疫学データにおいては、
他の年齢層よりも明確に高い発症率を示しています。
ただ、成人での発症事例も報告はあり、
その頻度についてはまだ議論のあるところです。
今回のデータは国民総背番号制の取られているデンマークにおいて、
年齢が12歳以上の住民4931775名を対象としたもので、
ワクチン接種後28日以内に発症した心筋炎や心膜炎の事例を、
2種のmRNAワクチン毎に比較検証しているものです。
トータルで269名の心筋炎もしくは心膜炎の事例が報告され、
そのうちの40%に当たる108名は12から39歳で、
73%に当たる196名は男性でした。
ファイザー・ビオンテック社ワクチンを接種した3482295名のうち、
28日以内に発症した心筋炎もしくは心膜炎は48例で、
これはワクチン未接種者の1.34倍(95%CI:0.9から2.0)と算出されています。
つまり、ワクチン後のリスクは高い傾向はあるものの、
有意なものではありません。
その頻度は10万接種当たり1.4件です。
男女別では女性の発症リスクが3.73倍(95%CI:1.82から7.65)で、
男性では0.8倍(95%CI:0.50から1.34)と、
女性のみで有意な増加が認められました。
年齢を12から39歳に絞ると、
その頻度は10万接種当たり1.6件とやや高くなっていました。
一方でモデルナ社ワクチンを接種した498814名のうち、
28日以内に発症した心筋炎もしくは心膜炎は21例で、
これはワクチン未接種者の3.92倍(95%CI:2.30から6.68)で、
こちらは接種者で有意に高くなっていました。
その頻度は10万接種当たり4.2件です。
男女別では女性の発症リスクが6.33倍(95%CI:2.11から18.96)で、
男性では3.22倍(95%CI:1.75から5.93)と、
こちらは男女とも有意な増加が認められました。
年齢を12から39歳に絞ると、
その頻度は10万接種当たり5.7件とより高くなっていました。
このように、
ワクチン未接種と比較してワクチン接種者において、
その後28日以内の心筋炎と心膜炎のリスクは増加していました。
ただ、リスク増加が全体で明確なのはモデルナ社ワクチンのみで、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンでは、
そのリスク増加は女性のみで有意に認められています。
これまでの報告は若年男性で多いというものが多かったので、
今回のデータとは異なる部分があります。
従って、この問題はまだ解決されているとは言い難く、
今後も幅広くデータが蓄積される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
British Medical Journal誌に、
2021年12 月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
心筋炎と心膜炎のリスクについての論文です。
この問題はこれまでにも何度も検証され、
論文やレターはブログでも何度も紹介しています。
新型コロナウイルス感染症予防のための、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンが、
その有効性において高い効果を上げていることは間違いがありません。
その安全性についても、
概ね満足のゆくデータが得られています。
ただ、幾つか気になる報告もあり、
その中で一番注目されているものの1つが、
ワクチン接種後の心筋炎や心膜炎の発症リスクの増加です。
これは報告の事例の多くが、
10代の男性であることに特徴があり、
その年齢層での疫学データにおいては、
他の年齢層よりも明確に高い発症率を示しています。
ただ、成人での発症事例も報告はあり、
その頻度についてはまだ議論のあるところです。
今回のデータは国民総背番号制の取られているデンマークにおいて、
年齢が12歳以上の住民4931775名を対象としたもので、
ワクチン接種後28日以内に発症した心筋炎や心膜炎の事例を、
2種のmRNAワクチン毎に比較検証しているものです。
トータルで269名の心筋炎もしくは心膜炎の事例が報告され、
そのうちの40%に当たる108名は12から39歳で、
73%に当たる196名は男性でした。
ファイザー・ビオンテック社ワクチンを接種した3482295名のうち、
28日以内に発症した心筋炎もしくは心膜炎は48例で、
これはワクチン未接種者の1.34倍(95%CI:0.9から2.0)と算出されています。
つまり、ワクチン後のリスクは高い傾向はあるものの、
有意なものではありません。
その頻度は10万接種当たり1.4件です。
男女別では女性の発症リスクが3.73倍(95%CI:1.82から7.65)で、
男性では0.8倍(95%CI:0.50から1.34)と、
女性のみで有意な増加が認められました。
年齢を12から39歳に絞ると、
その頻度は10万接種当たり1.6件とやや高くなっていました。
一方でモデルナ社ワクチンを接種した498814名のうち、
28日以内に発症した心筋炎もしくは心膜炎は21例で、
これはワクチン未接種者の3.92倍(95%CI:2.30から6.68)で、
こちらは接種者で有意に高くなっていました。
その頻度は10万接種当たり4.2件です。
男女別では女性の発症リスクが6.33倍(95%CI:2.11から18.96)で、
男性では3.22倍(95%CI:1.75から5.93)と、
こちらは男女とも有意な増加が認められました。
年齢を12から39歳に絞ると、
その頻度は10万接種当たり5.7件とより高くなっていました。
このように、
ワクチン未接種と比較してワクチン接種者において、
その後28日以内の心筋炎と心膜炎のリスクは増加していました。
ただ、リスク増加が全体で明確なのはモデルナ社ワクチンのみで、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンでは、
そのリスク増加は女性のみで有意に認められています。
これまでの報告は若年男性で多いというものが多かったので、
今回のデータとは異なる部分があります。
従って、この問題はまだ解決されているとは言い難く、
今後も幅広くデータが蓄積される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2021-12-20 06:19
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