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急性尿閉とその後の関連癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性尿編と関連癌リスク.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年10月19日ウェブ掲載された、
急性尿閉と尿路や女性器の癌リスクとの関連についての論文です。

急性尿閉というのは、
何らかの原因によって、
急に苦痛を伴って尿が出なくなる症状のことで、
圧倒的に男性に多く、
その罹患率は上記文献記載の海外データでは、
年間男性1000人当たり2.2から8.8件で、
年齢と共に急速に増加します。

推計として、
70代の男性の10%、
80代の男性の30%がこの症状を経験するとされています。

その最も多い原因は、
男性では前立腺肥大による尿路の狭窄で,
女性では膀胱排尿筋の機能障害です。

急性尿閉の原因として、
それ以外に尿路や女性器、直腸の癌などが考えられますが、
実際に尿閉の患者さんにおいて、
どのくらいの癌のリスクを想定したら良いのかについての、
信頼のおけるようなデータは、
これまでにあまり存在していませんでした。

今回の研究は、
国民総背番号制のデンマークにおいて、
全ての病院で診断された、
50歳以上の初回の急性尿閉患者トータル75983名を登録し、
その後の尿路系や女性器関連の癌、
直腸や自律神経系由来の癌の発症リスクを、
一般人口の発症リスクと比較しているものです。

その結果、
最初に急性尿閉を起こしてから、
3か月以内に前立腺癌が診断される確率は5.1%で、
1年以内に診断される確率は6.7%、
5年以内に診断される確率は8.5%でした。
尿閉から3か月以内に、
年間1000人当たり218件の前立腺癌が、
一般の発症率と比較して過剰に発症し、
3か月から12か月未満では21件が過剰に発症していましたが、
1年以降での発症率は、
一般と比較して差はありませんでした。

尿路系の癌については、
尿閉発症3か月以内において、
一般の発症率と比較して、
年間1000人当たり56件が過剰に発症し、
女性の外陰部癌については同様に24件が、
直腸癌については同様に12件が、
神経系の癌については2件が、
過剰に発症していると計算されました。

このように、
多くの関連癌の発症リスクは、
初回の急性尿閉後3か月以内のみ増加していましたが、
前立腺と尿路系の癌については12か月未満まで、
女性の浸潤性膀胱癌については、
数年に渡りそのリスクの増加が認められていました。

50歳以上の年齢における初回の急性尿閉は、
その後3か月の尿路系や女性器系などの癌の強い予測因子で、
こうした症状が出現した際には、
癌の検索を積極的かつ慎重に行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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