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唾液のRT-PCRの感度と適応範囲 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
唾液のPCRの感度と適用範囲.jpg
JAMA誌に2021年9月21日掲載されたレターですが、
唾液のRT-PCR検査を、
鼻腔の検査と比較した内容です。

新型コロナウイルス感染症の診断において、
スタンダードな検査は、
RT-PCR検査によるウイルス遺伝子の検出であることは、
間違いがありません。

この検査は鼻咽腔から検体を採取することが、
世界的に標準的な手技ですが、
最近では唾液の検査が簡便で患者に負担が少ないことより、
日本では専ら行われています。

過去の検証において、
有症状の感染の発症から9日以内くらいの期間においては、
唾液による検査は鼻咽腔からの検体採取と、
ほぼ同等の感度があることが報告されています。

ただ、無症状の感染においても、
同様の有効性があるかどうかについては、
それほど明確な知見があるという訳ではありません。

今回の検証はアメリカにおいて、
濃厚接触者の検査を鼻咽腔と唾液の両方で複数回施行し、
その感度を比較したものです。

404名の対象者に、
889回鼻咽腔と唾液の両方のRT-PCR検査を施行し、
その比較を行なったところ、
有症状の感染の症状出現から1週間の期間においては、
鼻咽腔と比較した唾液の感度は、
88.2%(95%CI:77.6 から95.1)であったのに対して、
無症状の感染においては、
58.2%(95%CI:46.3から69.5)という低率でした。

これは無症状感染の場合に、
鼻咽腔の検査では陽性であっても、
唾液の検査ではそのうちの58.2%しか、
陽性ではなかった、ということを意味しています。

発症から2週間目の検査においても、
有症状感染での鼻咽腔の検査と比較しての唾液検査の感度は、
83.0%(95%CI:70.6から91.8)と高率でしたが、
無症状では52.6%(95%CI:42.6から62.5)と低率でした。

このように、
有症状の新型コロナウイルス感染症では、
発症後2週間くらいの時期において、
唾液の検査は鼻咽腔の検査とそれほど遜色のない精度を持っていますが、
無症状でウイルス量が少ないような場合には、
その信頼性はあまりなく、
唾液の検査で陰性であっても、
無症状の感染は否定出来ないということが分かります。

無症状の濃厚接触者のRT-PCR検査は、
原則唾液ではなく鼻咽腔から検体採取することが、
今回の結果からは妥当であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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