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末梢点滴ラインの交換時期と感染リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カテーテル交換のタイミングと感染リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年9月17日ウェブ掲載された、
静脈のカテーテルの交換時期と、
それを介した感染リスクとの関連についての論文です。

静脈にカテーテルを挿入して、
そこから薬剤を注入したり、
水分や電解質を点滴するという医療行為は、
非常に一般的なものです。

短期的なものであれば、
一時的に血管を確保して、
薬液などを使用してからすぐに針を抜く、
抜き刺しのような方法が行われますが、
入院して継続的に点滴や注射が必要となる場合には、
留置針という維持可能なカテーテルを使用して、
それを持続的に静脈の中に維持します。

こうした医療行為は極めて一般的なもので、
その合併症や有害事象のリスクは少ないと考えられていますが、
カテーテルを介して細菌感染が起こり、
それが血液中に移行して、
敗血症のような重篤な感染を起こすことも、
皆無とは言えません。

こうしたカテーテルを介した感染の予防のためには、
定期的にカテーテルの交換を行うことが推奨されています。

しかし、それをどのくらいの間隔で行なうべきか、
というような点については、
あまり実証的なデータがある訳ではありません。

1つの考え方は、
たとえば3、4日に一度という決まったペースで、
静脈の穿刺部位を変え、カテーテルを交換する、
という方法を取ることで、
もう1つの考え方は、
特に交換の間隔は決めず、
点滴やカテーテルの状態をみて、
問題があればその都度交換する、
という方法を取ることです。

そのどちらが、
よりカテーテル感染の予防に繋がるかについては、
あまり実証的な研究がこれまで行われていませんでした。

今回の研究はスイスの10か所の専門施設において、
ある時期には96時間おきに、
末梢静脈カテーテルの交換を行い、
別の時期には今度は主治医や看護師の判断で交換を行い、
その後は再び96時間毎の定期的交換の方針に切り替えて、
どの時期にカテーテルを介した血液感染が多かったかを、
比較検証しているものです。

トータルで412631件の末梢静脈カテーテル事例を解析したところ、
医師や看護師の判断で交換を行なった時期には、
96時間毎に交換した時期と比較して、
血液の感染が7.20倍(95%CI:3.65から14.22)と有意に増加していました。
その後再び96時間毎の交換に切り替えると、
感染リスクの有意な増加はなくなりました。

このように、
医師や看護師の判断でカテーテル交換を行うと、
結果的にはより交換の間隔は伸び、
それに伴って明確にカテーテルを介した感染リスクは増加していました。

静脈カテーテルの交換は、
時期を決めて定期的に行うことが、
感染リスクを下げるためには必要な方法であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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