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新型コロナウイルス肺炎の中期的な予後と肺機能 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症の4か月後の肺機能.jpg
European Respiratory Journal誌に、
2021年9月16日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス肺炎の発症4か月後の肺機能を解析した論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
その流行初期の段階では、
新型コロナウイルス肺炎と呼ばれていました。
つまり、重症のウイルス肺炎を起こすことが、
最大の特徴であると考えられていたのです。

その後肺炎以外に、
全身の血管病変など、
多くの病態が生じうることが明らかになり、
そうした呼び方自体はあまり使用されなくなりましたが、
重症肺炎が患者に最も深刻な影響を与える、
という事実には違いはありません。

新型コロナウイルス感染症は、
また治癒後にも後遺症と呼ばれるような、
多くの症状が持続することが知られています。

この後遺症も多岐に渡りますが、
その中には肺炎による肺の器質性変化が、
その原因となっていることが、
少なからず認められています。

しかし、実際には新型コロナウイルスに起因する肺炎が、
その後中長期的にどのような影響を残すのかについては、
少数例の検証が行われているに過ぎません。

今回の検証はイタリアにおいて、
379名の新型コロナウイルス感染症の患者を、
その診断から4か月という時点で、
中期的な肺機能の予後を評価したものです。

379名の患者中、222名が肺炎を罹患し、
そのうちの60.8%に当たる135名が酸素療法を必要としていました。
診断から4か月の時点で、
肺炎を発症した患者は発症しなかった患者と比較して、
安静時の動脈血酸素飽和度が有意に低く、
歩行試験時の酸素飽和度も、
肺活量も有意な低下が認められていました。

このように新型コロナウイルス感染症に罹患して、
肺炎を発症した患者では、
発症から4か月が経過した段階においても、
肺機能の低下が一定程度は残存していることが確認されました。

これがどの程度長期持続するものなのか、
リハビリテーションを含め、
どのような対応を取ればこうした低下を食い止められるのか、
今後より詳細な検証の結果を待ちたいと思います。

東京のような日本の流行地域においては、
現状酸素の低下が認められるような患者でも、
肺炎の診断は自宅療養であれば明確には施行されず、
その予後についてもあまり科学的な検証や、
治療の評価が行われているとは思えません。

中長期的にも肺炎患者では肺に後遺症が残るものだとすれば、
たとえ症状が軽症で自宅療養で改善したとしても、
CTなどによる肺炎像の確認や、
肺機能検査の経過観察などは必須であると思います。

重症事例を救命することと、
隔離により感染拡大を防ぐことが、
医療の2本柱として機能しているのが現状ですが、
今後はこの病気の性質をより把握した上で、
中等症から軽症事例の評価や経過観察のあり方など、
科学的検証の元に、
しっかりとした指針が作成されるべき時期に、
来ているのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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