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医師の働き方と入院患者の予後 [ゆるい論文]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
パートタイムの医師のリスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年9月13日ウェブ公開された、
医師の働き方と患者の予後との関連についての論文です。

こうした論文は欧米では結構あるのですが、
いたって通常通りの分析が行われている一方で、
その題材自体はユーモアを感じるもので、
何処まで真面目なのか分からないような、
「ゆるい」印象もある内容です。

医者の働き方はブラックで、
無給で残業をさせるのも当たり前、
徹夜の当直の次の日も朝から通常に勤務するのが当たり前、
というようなところがありました。

ただ、最近では働き方改革というようなことが、
医療の世界でも言われるようになり、
こうした法律無視のような働き方を改善しよう、
というような動きもあり、
医師の方でも医局や病院に縛られず、
フリーで自由に働きたい、
というような考え方も多くなっているのが現状です。

そうした流れを受けて、
パートタイムの医者が増えており、
上記文献の記載では、
アメリカでも病院の勤務医の4分の1は、
パートタイムの医師で占められているようです。

医師がパートタイムであること自体は、
悪いことではありません。
ただ、たとえば救急患者を受け入れているような病院で、
臨床に携わっている時間の短い医師が、
患者を受け持つことが適切であるのかどうか、
というような点については、
色々な考え方がありそうです。

今回の研究はアメリカの高齢者医療保険のデータを活用して、
救急で病院を受診した患者の生命予後が、
主治医の1年間の臨床受け持ち時間により、
どのような影響を受けるのかを比較検証しているものです。

臨床に従事している時間が短いということは、
その医師が臨床はパートタイムで行なっている、
ということと、ほぼ同義になるという理屈です。

19170人の医師の治療を受けた、
392797件の入院事例を解析したところ、
4群に分けた年間臨床勤務時間が最も少ない、
つまりパートタイムの医師が治療した場合の、
30日の時点の死亡率が10.5%であったのに対して、
最も勤務時間が長い、すなわち臨床を専ら行なっている医師の、
30日の時点の死亡率は9.6%で、
この差は0.9%で統計的に有意なものでした。

この結果だけで、
パートタイムの医師の治療は死亡リスクを上昇させる、
という結論に至るのはかなり乱暴ですが、
実際に救急で治療に当たる医師の技量には差があり、
それを測る1つの物差しが、
その医師の臨床勤務時間だというのは、
1つの妥当な考え方ではあります。

上記文献の考察においても、
殊更そうした医師の働き方を批判するということではなく、
パートタイムの医師が診療に当たる場合には、
他の常勤の医師や看護師などの医療スタッフが、
より緊密な連携を取って、
患者に不利益が生じないようにチーム医療として取り組むべきだ、
というような考え方が述べられていて、
医師の働き方の多様化を受けて、
今後適切な医療レベルを、
どのように保つのかが重要となることは、
間違いのないことのように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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