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妊娠中の抗精神病薬の使用と発達障害リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後はクリニックで別件の仕事の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗精神薬の妊娠中の使用と発達障害リスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年8月16日ウェブ掲載された、
妊娠中の抗精神病薬の使用が、
早産や発達障害と関連するかどうかを検証した、
香港の疫学データです。

抗精神病薬は統合失調症の治療薬ですが、
それ以外にも双極性障害や難治性のうつ病、
認知症の周辺症状などにも、
その使用は拡大しています。

妊娠中にはこうした薬剤の使用は、
なるべく控えることが前提となりますが、
実際には中止は困難で継続しているケースも、
かなり多いのが実際だと思います。

この妊娠中の抗精神病薬の使用と、
関連のある可能性がこれまでの臨床データから指摘されているのは、
早産や低出生体重児(正確にはSGA児)、
そして注意欠陥多動性障害と自閉症スペクトラムです。

ただ、これまでの報告では、
若干の影響があったというものから、
特に関連が見られなかったというものまで様々で、
特定の傾向が見られると断定出来るようなものはありません。

今回の研究は香港において、
注意欠陥多動性障害の解析には、
333749の母親とその子供のペアを、
自閉症スペクトラムと早産、SGA児の解析には、
411251の母親と子供のペアを用いて、
その解析を行なっています。
その結果、妊娠中の抗精神病薬の使用と、
お子さんの注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム、
SGA児との間には有意な関連はなく、
早産児のみそのリスクが1.40倍(95%CI:1.13から1.73)、
有意に増加していました。

ただ、これを妊娠中以外の時期の、
抗精神病薬の使用と比較した場合、
また一卵性の双子で解析した場合には、
早産児のリスクについても、
有意差はなくなっていました。

このように、
今回の検証においては、
妊娠中の抗精神病薬の使用と、
お子さんの早産やSGA児、
注意欠陥多動性障害や自閉症スペクトラムの、
お子さんでの発症との間には、
明確な関連は認められませんでした。

今後この問題は更なる検証が必要ですが、
現時点で早産や発達障害と、
妊娠中の抗精神病薬の使用との間には、
明確な関連は証明されていないと、
そう考えて良いようには思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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