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新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎(米軍接種23例報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチン後心筋炎23例.jpg
JAMA Cardiology誌に、
2021年6月29日掲載された、
新型コロナのmRNAワクチン接種後に報告された、
23例の急性心筋炎事例をまとめた報告です。

ファイザー社とモデルナ社による、
新型コロナウイルスmRNAワクチンは、
その有効性が世界中の臨床データにより実証されています。

ワクチンの歴史上、
これだけの有効性が確認されたワクチンは、
他にはないと断言しても誤りではないと思います。

ただ、勿論100%安全なワクチンがないことは、
これはもう間違いのない事実で、
mRNAワクチンについても、
アナフィラキシーなど稀な有害事象について、
検証が行われていることは、
皆さんもご存じの通りです。

最近その報告が注目されているのが、
ワクチン接種後の急性心筋炎の事例です。

前回7例のアメリカでの小児事例をまとめた論文をご紹介しました。

今回もアメリカでの事例ですが、
米軍ののべ281万回接種における、
23例の急性心筋炎の事例が解析されています。
これは母数が明確である点で重要なデータです。

これは1回、2回に関わらず、
接種後4日以内に発症した急性の胸の痛みを検査し、
心筋の逸脱酵素であるトロポニンなどの上昇があり、
MRI検査などで心筋炎とほぼ確定した事例のみを抽出しているものです。
その結果23事例が抽出され、
その年齢の中間値は25歳で20から51歳に分布しています。
報告の多い10代は含まれていないという点が1つのポイントです。

このうち7例はファイザー・ビオンテック社ワクチン接種後で、
残りの16例はモデルナ社ワクチン接種後の発症です。
これまでの事例はファイザー社が主体でしたが、
今回はむしろモデルナ社が多く、
これはmRNAワクチンに共通する有害事象である、
と言うことが分かります。

死亡事例などはありませんが、
16例が1週間くらいの経過で完治している一方、
7例は調査の段階でまだ胸部不快感が残存している、
と記載されています。

事例は全て男性で、
19例は2回目接種後に発症しています。

これを一般的な急性心筋炎の発症リスクと比較してみると、
トータル281万回接種全てを対象とした場合には、
2から52件の心筋炎が、ワクチンと無関係に発症する可能性があり、
実際の発生が23件であるとすると、
偶発的な所見の可能性が高い、という判断になります。
ただ、これを男性で2回目の接種を受けた436000回のみを対象とすると、
ワクチンと無関係な発症が0から8件と推測される一方で、
実際の発症は19件なので、
明らかに自然発症より頻度は多く、
ワクチン接種との関連がある可能性が高い、
という判断になります。

この頻度は単純計算で23000回の2回目接種当たり1件、
ということになり、
以前ご紹介したイスラエルでの報告が、
若年男性で2万人に1人ということでしたから、
ほぼ同じ発症率ということになります。

このように、
まだ因果関係は不明ですが、
若年(概ね20代くらいまで)の男性の、
mRNAワクチン2回目接種後に起こる、
胸部痛や胸部不快感などの症状は、
急性心筋炎の可能性を疑う必要があり、
心電図や血液トロポニンの測定を、
迅速に行ってその可能性を精査する必要があると思います。

クリニックでも、
滅多に急性心筋梗塞などの事例はないので、
これまでは用意していなかったのですが、
トロポニンの迅速キットを購入して、
その備えをしているところです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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