SSブログ

糖尿病新薬チルゼパチドのセマグルチドとの比較(第3相臨床試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
チルゼパチドとGLP-1アナログの違い.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年6月25日ウェブ掲載された、
2型糖尿病治療の新薬、チルゼパチドの有効性を、
GLP-1アナログと比較した臨床試験の結果です。

昨日ご紹介したLancet論文とほぼ同時期に発表されたもので、
その続編というのか、
同じ第3相臨床試験の結果を、
2つに切り分けて発表されているものです。

イーライリリーが創薬したチルゼパチドは、
2種類あるインクレチンの、
GIPとGLP-1の受容体を、
共に刺激する性質を持つ、
週1回の注射薬です。

もともと2種類のインクレチンがあることは知られていましたが、
GIPは糖尿病では高度に低下していて、
あまり有用性がないと考えられていたので、
GLP-1の注射薬が先に開発されたという経緯があるのです。

今回その相補的作用を期待して、
その両者の受容体作動薬が開発されたのですが、
そこでポイントとなるのは、
本当にGLP-1アナログ製剤を超える有効性があるのか、
という点です。

そこで今回の臨床試験では、
週1回のGLP-1アナログ製剤であるセマグルチドの、
通常用量である1㎎と、
GIP/GLP-1アナログ製剤のチルゼパチドを、
こちらは5㎎、10㎎、15㎎という3種類の用量設定で用いて、
その効果を比較検証しています。

対象は2型糖尿病の1879名で、
くじ引きで4つの群に分けると、
40週の経過観察を行っています。

その結果、40週の時点での、
血糖コントロールの指標であるHbA1cの低下幅は、
セマグルチド群が平均で1.86%だったのに対して、
チルゼパチドの15㎎の高用量では2.30%で、
その差は0.45%(95%CI:-0.57から-0.32)と有意に認められました。

このように、
この製薬会社主導の臨床試験のみでは、
何とも言えない部分がありますし、
昨日のデータと解析対象や結果が微妙に違うという点も、
少し気にはなりますが、
そもそも飲み薬のDPP4阻害剤は、
GIPとGLP-1の両者を増加させる薬ですから、
それを強化したものと考えれば、
今回の薬に有用性のあることはほぼ間違いがなく、
後はそのコスト的な面などが、
まっとうなレベルのものであるかによって、
この薬が糖尿病治療の主軸の1つになるかどうかが、
今後決まるような気がします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。