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アビガン(ファビピラビル)の新型コロナウイルスに対する有効性(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アビガンのメタ解析.jpg
2021年のScientific Reports誌にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
インフルエンザ治療薬アビガンの臨床的有効性を検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症の話題は、
完全にワクチンがその主体になっている昨今ですが、
勿論予防と治療が感染症対策の両輪で、
その有効な治療薬が求められていることは、
今も変わりがありません。

しかし、実際には重症の入院事例に対する、
抗ウイルス剤のレムデシビルと、
昔ながらのステロイド剤に一定の有効性が確認されている以外は、
多くの治療薬候補が浮かび上がっては消えてゆく、
という感じで、
未だ有効な決定打のような薬はありません。

特に求められているのは、
インフルエンザにおけるタミフルのように、
軽症から重症まで使用が可能で一定の有効性があり、
予防にも使えるというような、
使い勝手の良い薬剤です。

アビガン(ファビピラビル)は、
RNAポリメラーゼ阻害剤で、
ウイルスが感染した細胞内でのウイルス遺伝子の増殖を抑える、
というメカニズムの薬です。
新型コロナウイルスもRNAウイルスですから、
インフルエンザと同様の効果が期待されたのです。

ただ、その後行われた臨床試験はそれほど大規模なものはなく、
その有効性もそれほど明確とは言えないものでした。
そのため、国内外のガイドラインにおいて、
現状アビガンは治療薬として推奨はされていません。

比較的小規模の臨床試験しかない場合に、
その有効性の検証の方法としてはメタ解析があります。

今回のデータは、
これまでの9件の臨床研究に含まれる、
827例のデータをまとめて解析したメタ解析です。

その結果、
入院後7日間における改善率は、
コントロールと比較してアビガン群において、
1.24倍(95%CI:1.09から1.41)有意に増加していました。
ただ、入院後14日間の改善率は、
これも10%高い傾向は見られたものの、
統計的に有意にではありませんでした。

また、入院後14日時点のウイルス除去率は、
11%アビガン群で高い傾向がありましたが、統計的に有意ではなく、
酸素療法の必要性の差などにおいても、
統計的に有意な差は認められませんでした。

このように、
比較的少数例の検証において、
アビガンにより新型コロナウイルス感染症の予後が、
若干改善したとするデータはありますが、
それほど明確なものとまでは言えないようです。

ただ、これはいずれも入院事例の検証で、
比較的重症の事例を対象としているので、
より軽症の事例では有用性がある、
という可能性も否定は出来ません。

最近アビガンの誘導体が、
新規の抗ウイルス薬として開発されている、
というような話題もあるようですから、
RNAポリメラーゼ阻害剤を新型コロナウイルス感染症の、
予防や軽症事例に用いるという考え方自体は、
まだ否定されたという訳ではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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